転生前

□どうやら風邪をひいたようで
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目が、覚める。何故かいつもより少しだけ遠く感じる天井。今日もまた1日が始まる。だが………


「…………」


頭がクラクラする。どうやら風邪をひいてしまったようだ。



試験前という事もあり夜中2時まで勉強していた僕は、いつの間にかソファーで眠ってしまっていた。朝になり目が覚めた時、ソファーから転げ落ちてしまっていたらしく、床に寝そべっていた。しかもシャツ一枚という、風邪をひいて当たり前の格好で。これしか原因ないな。

たださっき言ったとおり試験前だから、学校を休む訳にはいかない。それに、こんなことを御狐神くんに知られてしまったら、一体どうなることやら。きっとまたいつものように僕を心配して、それから自分のせいだと刀を差し出して、


「僕を処分して下さい」


と言うはず……いや、言うだろう。絶対。そして僕は色々と考えた結果、『しんどいのを御狐神くんにばれないようにしながら1日を過ごす』という作戦を練り上げた。

まずは顔を見られないようにした。きっと僕は、熱のせいで顔が赤い。鋭い観察力をもった彼にはすぐにばれてしまうだろうと思ったから。

次に、あまり声を出さない…要するに、御狐神くんと喋らないことにした。これは気付かれないためというのもあるが、自分自身のためでもあった。

こんなに頭がクラクラして調子の悪い時に、毎回御狐神くんの口から出てくる言葉につっこむ気はおこらない。大声を出すとしんどくなるのも分かっている。それならいっそのこと、会話しないほうが楽だと判断した。それだけの事。


これがうまくいくかは……分からない。すでに僕と恋仲である御狐神くんに、上手く嘘をつけるかどうか……こんな事を考えていても始まらないな。そう思いながら、制服に着替えた。

色々と覚悟を決めて部屋を出る。もちろん顔は下向きのまま。いつもより重く感じるドアを開けると、やはり御狐神くんがいた。今の僕には彼の足しか見えていないが、きっといつものようにニコニコと笑っているのだろう。


「おはようございます、凛々蝶さま」


「…………おはようございます」


さぁ始まるぞ………頑張れ、僕………!


「凛々蝶さまは今日もお美しいですね。髪は上質なシルクのような艶があり、お肌は「朝御飯を食べに行くぞ」


「…わかりました」


い、言えた………途中で止められた!とか思い、僕は心の中で大きくガッツポーズを決めた。顔に出てないといいが……あ、下を向いてるから別にいいのか。御狐神くんは僕の右手をとり、


「ではラウンジへ行きましょうか」


と言ってくれた。僕はああ、と小さな声で返事をして、朝御飯を食べに行く。よし、第一関門クリアっ。

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