1859text-4 季節もの・お題

□Melty Kiss
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「や……、もう、やだって……! あ、あ、あ……!」

雲雀はもうずっと、飴を舐め転がすみたいにして獄寺の左胸に吸いついたままだ。

「こんなに色が変わると思わなかった」

床に組み敷いた獄寺の両腕を、雲雀がその頭上に片手で戒めながら伸し掛かっている。空いた手の甲で口元に滴る雫を拭った雲雀が、面白そうに獄寺を見下ろした。
それが尚も左胸に屈み込んでいこうとするのを見て、獄寺は本気で抗った。

右胸の突起は触れられないまま、白く薄い肌が血の色を透かせた薄い桃色をしている。
ちょうど獄寺の口に押し込まれた大粒の飴が溶けて無くなる頃まで、片側だけは執拗に雲雀の舌に嬲られ続け、腫れたみたいに赤くなって熱を持っている。

雲雀がほんの僅か触れるだけでも、むず痒い感覚が下肢に走る始末だ。
床が冷たく背中を圧迫しているのも忘れるほど、獄寺の感覚がおかしくなっていく。

「や……、もう、無理、やめろ……っ」

「じゃあ、どこを触ればいいのか教えてよ、君が」

「…………っ」

「このままじゃいけないの?」

「っかやろ……女と一緒にすんじゃねえ……!」

僅かに頷く素振りを見せた雲雀は、獄寺が穿いている制服のジッパーを下げ、下着ごと両足から引き抜いた。

布が通過するにもいちいち引っかかる、欲求不満の象徴が反り返って獄寺の下腹に触れている。
その様を直視するに耐えず、獄寺は思わず顔を背けた。
雲雀の視線がそのかたちを辿るように見つめてくる。

「そう言う割には、もうあと少しじゃない?」

そして可笑しそうに笑いながら、雲雀がわざと性器に口を近づけて囁いた。
鈴口から滲む体液は珠を結んで零れそうになっていて、息を吹きかけるだけでも刺激に感じるのか、獄寺の太腿が粟立った。

「君の身体って、どこもピンク色できれいだ」

「……ッ」

こうも羞恥的な日本語ばかり吐く口を、どうにかして塞ぎたい。
獄寺は渾身の力を込めて上半身を浮かせて、腕を無理やり振りほどくと雲雀の薄いくちびるにくちづけた。

「……ん、」

しっとりとキメの細かい粘膜と触れ合うと、その感触に獄寺の背筋が震えた。

まるでこうして触れることを約束されていたように、雲雀の粘膜が獄寺のくちびるのかたちに沿ってくる。
触れた場所からじわりと快感が湧き上がった。細胞の一つ一つが歓喜しているみたいだ。

「は、……っ」

舌を吸われて、凶悪な刺激が獄寺の脊髄を駆け抜ける。

「ん……っ!」

むき出しの腰が雲雀の身体の下で戦慄いた。

羽織ったシャツの胸元をはだけてアンダーシャツを首まで捲り上げたまま、白い肌が露わになっている、それだけでも充分に扇情的だ。
なのに更に潤みきった翠の瞳が、青みがかった白目の縁を情欲に染めて揺れている。

快感に歪められた獄寺の瞳が、ふと行き先に迷った猫のような上目遣いで雲雀を見た。
理性を吹き飛ばすようなその仕種に、雲雀は思わず息を詰める。

「……………………」

この、自分の下にある獄寺隼人の身体。
その媚態は全部自分の手によるものだ。

僕が獄寺隼人をこうした。

雲雀は肉食獣が食らいつくみたいに、獄寺の肩口にきつくくちづけた。

彼の身も心も全部手に入れてしまいたい、目の前の柔らかな肌を食べ尽くしてしまいたいような凶暴な欲求と、弱い部分全てを隈なく愛撫して、どこへも、誰の元へも逃げ込めないようにしてしまいたい、そんな欲求がせめぎ合いながら胸を衝く。

狂おしい想いが雲雀の胸の裡を渦巻いて、今にも噴き出しそうなのを堪え、傷のひとつもない滑らかな頬から、喉元にかけて穏やかに撫でていく。

「獄寺……、……隼人……」

「……っ」

もういい加減触れて欲しくて仕方がないのに、雲雀は肝心の部分に触れないどころか、獄寺の全身をただ見つめているだけだ。

それでも間近い雲雀の身体からは熱さが伝わってきて、酔払ったみたいに目の縁が赤い。

獄寺の身体が抱える疼きと性質を同じくする感覚を、きっと雲雀も共有している。
手のひらから伝わる熱にそれを思うと、胸がおかしくなったように痛痒い疼きを訴えた。

「……ひ……ばり……」

目の前の奴の事以外、何も考えられない。

いきたい、どうにかしてひとつになりたい、そればかりが獄寺の脳味噌を支配している。

どうして同じ性別にありながら、こんなに激しい欲求に囚われるのかわからない。
今はとにかく雲雀のせいで持て余している、この溶け崩れたような身体を何とかして欲しい。

自分ひとりで処理しようにも、もう無理だ。
男の身体は簡単なようで面倒に出来ている。
もはやここまで追いつめられてしまったら、自分の手で始末するにしても、雲雀のことを妄想せずには居られない。

「……好きだって言えよ、オレの事……っ」

真っ赤になりながら紡いだことばが最後まで音にならないうち、雲雀に身体をきつく抱き締められた。

「そんな言葉で括れるのか解らない、でも」

きっと間違いでもない。
囁きながら、雲雀は改めてくちづけた。

「僕からも愛をあげる」
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