オリガミ
□005【鬼の住処・後編】
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目覚めると、そこは暗闇だった。
ミトシは、ぼんやりした頭を懸命に働かせる。
何度考えてみてもソウビと乾杯をした後の記憶が無い。
冷たい床の感触は、ここがソウビの部屋ではないことを語っていた。
状況を総合的に判断した結論。
「……拉致られたか」
一連の失踪事件は、やはりソウビが黒幕だったのだろう。
油断を後悔するが、すぐに気持ちを切り替える。
幸いなことに身体は自由だった。
痺れが残る手足を動かし、床を這って出口を探す。
その時、微かに風の流れを感じた。
出口かもしれない。
ドアノブがあると思われる高さへ手を伸ばした瞬間、外側から勢い良く扉が開いた。
「〜っ!」
突然のことで避けられなかったミトシは、顔面を強打してしまう。
あまりの痛みに声も上げられず、床を転げ回るしかなかった。
「す……すみません!まさか、もう起きてるとは思わなくて……大丈夫ですか!?」
扉を開けた犯人が、慌てた様子でミトシの近くに座り込む。
その愛らしい声には聞き覚えがあった。
床に置かれたランタンの灯りが照らし出した姿に、ミトシは痛みを忘れて見入ってしまう。
「キノカ……」
猫のような大きな瞳に、小さな鼻と、ツンとした唇。
それは正に、愛しいキノカの姿だった。
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