オリガミ

□005【鬼の住処・後編】
1ページ/20ページ


目覚めると、そこは暗闇だった。

ミトシは、ぼんやりした頭を懸命に働かせる。

何度考えてみてもソウビと乾杯をした後の記憶が無い。

冷たい床の感触は、ここがソウビの部屋ではないことを語っていた。

状況を総合的に判断した結論。

「……拉致られたか」

一連の失踪事件は、やはりソウビが黒幕だったのだろう。
油断を後悔するが、すぐに気持ちを切り替える。

幸いなことに身体は自由だった。

痺れが残る手足を動かし、床を這って出口を探す。

その時、微かに風の流れを感じた。
出口かもしれない。

ドアノブがあると思われる高さへ手を伸ばした瞬間、外側から勢い良く扉が開いた。

「〜っ!」

突然のことで避けられなかったミトシは、顔面を強打してしまう。

あまりの痛みに声も上げられず、床を転げ回るしかなかった。

「す……すみません!まさか、もう起きてるとは思わなくて……大丈夫ですか!?」

扉を開けた犯人が、慌てた様子でミトシの近くに座り込む。

その愛らしい声には聞き覚えがあった。

床に置かれたランタンの灯りが照らし出した姿に、ミトシは痛みを忘れて見入ってしまう。

「キノカ……」

猫のような大きな瞳に、小さな鼻と、ツンとした唇。

それは正に、愛しいキノカの姿だった。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ