読書
□白い悪魔
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俺が悪魔になって初めての仕事は少女の祖父の命を奪う事だった。その祖父は昔、幼い悪魔に願いを一つ叶えてもらった事があるとリストに載っていた。だから悪魔が命を奪いに行くんだ…。
「ここがその人の家か…。」
「……天使さん?」
これが少女と会った初めての日。
俺は声がした方…後ろを見た。そこには体の弱そうな少女が居た。
「俺が見えるのか?」
動揺した…。普通は命を奪う相手にしか俺たち悪魔や天使の姿が見えないからだ。
「うん…。どうして?」
「えっ?」
「どうして天使さんがここに居るの?」
「……それは言えない。」
俺がそう言うと少女は笑った。と言っても微笑み程度の笑いだが…。
「なぜ笑う?」
「天使さんは私を連れて逝くんでしょ?」
俺は驚いた。もしそれが本当であったとしても笑って言える事ではない。普通はもっと悲しむはず。
俺は少しでも早くその言葉を否定したかった…その為叫ぶように『違う!!』と言った。
「じゃ…どうしてここに居るの?」
「…死ぬのはお前じゃない。ここに住んでいる老人、お前の祖父だ。」
少女の顔から笑みは消え動揺した顔になった。そしてその後、少女は泣き崩れた。
「どうして…どうして、おじいちゃんが。」
「彼は罪を犯した。悪魔を呼び願いを叶えて貰ったんだ…。」
「それでもおじいちゃんは優しい。…私の事を本当に愛してくれる。普通は恐ろしくて遠ざけるはずなのに。」
始め俺はその言葉の意味が分からなかった。孫を愛するのはよくある事で、恐ろしいと思うはずも避けるはずも無い。気遣う優しさの心があるのが人間というものだから。 ……本当にそれが人間というものなのか?じゃ、俺は何故死んだ?生きている頃の俺は病気でもなければ、事故だって一度も無かった。
覚えてる訳じゃないが、俺の外見でそう判る。死んでも病気だった奴は顔色が他の奴に比べ悪いし、事故死した奴は傷が目立たなくなったにしろ残っている…。
(思い出すんじゃない!!)
「誰だ!」