H×Q

□ヒソカがお花見に行きたい話
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桜が、咲きました。

春満開、綺麗なピンク色の桜がマンションの前にある公園で咲き誇っている。それをベランダから見ると、まるで桜色のカーペットみたいだなぁ。なんて、月並みの事を思いながら洗濯物を干した。
「クロロさ、そんなに本ばっかり読まないで外に行こうよ」
せっかくだからお弁当も持っていこう。お酒とかも買っていってもいいかも知れない。レジャーシートはないから新聞紙とか引いといたらでしょ?それから二人で日向ぼっこして「春だねぇ」とか親父くさい事言うんだ。ねぇ、いいと思わない?まぁ、そんな提案をしても彼は聞きもしないだろうから言わないけれど。
彼は本が好きだ。僕は彼が好きで、本の事はどうでもよくて。本当はかまって欲しくて、いや構わなくてもいいから相づち位して欲しくて。
僕の要望はそんなに我侭なものだろうか。この人のご飯を朝昼晩ちゃんと作って、洗濯物も天気がよければ毎日干して、掃除は照明からトイレの便器までピカピカにして。そんな僕のこの要望が我侭だという人は僕にあと何をすれば良いのか教えてくれないものだろうか。
「クロロー」
外はポカポカ春陽気。ガラスの壁がなくなったベランダからは風に晒されてた洗濯物が気持ち良さそうに揺れている様子がよく見える。あぁ、いいなぁ僕も外に行きたいな。
「…まぁ行かないなら一人で行くよ」
お弁当はいらないから缶ビールでもコンビニで買って、それから散歩しながら適当な場所見つければいいや。せっかくの春日和、ニュースでも花見の楽しそうな様子が写っていたし。一人でお花見か、寂しいなー。
「…………」
無反応ですか、そうですか。もういいです、頼みません。そんなに本が好きならホントに本と付き合ったら良いよ。あ、今のホントの[ホン]トと[本]とを掛けたんだけど気付いた?なんて、そんな事言っても今の状況は何ら変わりはしないのだけれど。
「嘘だよ、クロロと一緒じゃないと意味ないし」
「そうか」
…聞いてたなら早くキャッチボールを成立させてよ。少しイラッてしたので少し文句を言ってやる事にした。別にいいよね、ちょっとだけ。
「あれ、聞いてたの?ずっと本ばっかり見てたから聞いてないと思ってた」
言ってやった。皮肉交じりに言ったらクロロはようやく本を閉じてこんな事を言った。

「・・・あぁ、その事なんだが」
桜を背景にしたお前はさぞ画に成るのだろうな。なんて、な。

言いたい事だけ言ってクロロは本をソファーにおいて何も無かった様な顔して、ほら花見するんだろ。と僕をせかした。
そういえばクロロ、ずっと本を見てたけど目は動いて無かった様な。え、じゃあずっとそんな事考えてたの。そんな、
「まったく、お前と会ってからまともに読書もできないな」
と、彼は困ったように苦笑いを僕に向けるんだ。
きっと彼はその言葉で僕がどれだけいっぱいいっぱいに成ってるだなんて、考えてもいないんだろうけど。

桜が、咲きました。前までならそれで終わりだったのだけど。
今は彼の好きなものをたくさんお弁当に入れようと、そんな事ばかり考えているんだ。

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