H×Q

□クロロが運動不足な話
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日頃の運動不足とは怖いもので。

「ん、コレなに」
「あ?何だっていいだろ別に」
地獄のようなテスト期間が終わり、やっと勝ち取った完全休日の土曜日。俺はテスト期間中も世話になったヒソカの家に行った、勿論勉強なんかする訳が無い。たんに遊ぶだけ。で、この万年発情期野郎が終わるはずも無く。真昼間っからお盛んなことで、なんて言われるかも知れないがまぁそれは男子校生な訳で。目の前の野郎は何の躊躇も無く俺の服を脱がせていった。その行為は初めてなわけではないし、二人が同意の上での行為なので俺は特に抵抗もしなかった事もありすでに俺は上半身には何も着ていない。そして事件が起こったのはヒソカがズボンを脱がせたときだった。
「何でこんな所に傷があるの」
目の前にいる金髪は俺の内太ももをなぞりながら言った。あーっと、確かその怪我は昨日の体育の時間に跳び箱で作ったやつだっけか。確かヒソカは一番高い所跳んでたけど、俺は真ん中くらいで諦めたんだっけ。仕方ないだろ、俺は普段運動なんかしないんだから。まぁ、それはヒソカも同じか。…ちょっと待てよ跳び箱で怪我したってちょっと恥ずかしくない?だって確か昨日俺メッチャ普通のフリしてたけどめちゃくちゃ痛くて恥ずかしかったんだぞ。それをヒソカに言うのか?この運動万能ヤローの事だ、絶対にバカにするだろ。クソ、言えるわけあるか。
「なんでもない」
俺は顔を背けた。あんまりこいつの目に見られたらポロッと本当の事を言ってしまいそうになる。色素の薄い目は地毛である金髪の隙間から細く見える。本当にムカつくくらい男前だな、こいつの顔。そんな事に気を盗られているうちにヒソカは俺の内太ももの擦り傷につめを立て、少しずつ力を入れ始めた。力、を…
「痛い痛い痛い!!なにするんだッ」
「誰に付けられたの、コレ」
は?何を言っているんだコイツは。ヒソカは少し怒ったように眉を寄せている。俺のほうはまったく状況が理解できずにいた。誰ってどういうことだ。そんな俺の心中を分かっていない様で、ヒソカは少し強い口調で言った。
「答えて」
「おい、待て何の話だ」
そう話している間にも俺のうち太ももの傷をヒソカの爪が抉って行く。爪長いんだよお前、そんなんでヤッたら俺が怪我するだろ。この前もあれほど切ってからしろって言ったのにだな。いや、今はそんな事どうでも良いんだ。コイツは何か勘違いをしているらしい。というかおい、ちょっと力入れすぎですよ、めちゃくちゃ痛いですよヒソカさん。
「誰と浮気したの。許してあげるから言ってごらん」
「あ?浮気なんか誰がするかバカモンが」
誰に向ってモノを言っているんだ貴様は。大体俺が浮気なんかすると思っているのか。俺が呆れたように言うと、ヒソカは更に疑い深く聞き返してきた。
「じゃあコレ何」
コレ、というのは先ほどから問題になっている俺のうち太ももの傷の事だろう。え、言わなきゃダメなのか?でもここで言わなかったら余計ややこしくなるよな。
「あー、だからアレだよ」
「なに」
うわ、超目がすわってるんですけど。…言うしかなさそうだな。
「昨日、体育で怪我したんだよ」
「・・・・・・え」
ヒソカは俺の顔をじっと見た後、傷口を見た。
「擦り傷じゃない」
「そうだよ」
「なにで怪我したの」
「今跳び箱しかやってねぇだろ」
「あー…ごめん。勘違いしてたみたい」
そうですね。その勘違いのせいで俺の内太ももは今まで受けた事のないほどのダメージを受ける事になったよ。
「ちょっと考えたらわかるだろ」
「僕跳び箱で怪我した事ないから」
「うーわー」
徐々に力が緩められ完全にヒソカの指から力が抜けた後それは俺から離れていった。肌にはくっきりと爪の跡が付き少し血が滲んでいる。
「血出ちゃったじゃねーか」
「ごめんね」
「大体誰が浮気するって?」
「ごめん」
他にも言いたい事はイロイロあるけどそれを言おうと思ったらヒソカに抱きしめられて何も言えなくなった。コイツって本当にずるいと思う。…とりあえず最後に。
「爪、早く切って来いよ」
それが俺にとっての今できる最大限の誘い文句なわけで。
アホか、俺だって久しぶりなんだよ。これ以上我慢させるんじゃねぇ。

ちっちゃな、ちっちゃな事なんだけどやっぱり嫉妬とかヤキモチとかされるのは悪い気はしないかもしれない。と思った土曜日の正午過ぎ。


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