short
□熱い。
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「ど、どこにも、行かない?」
「え?」
「すぐ、戻ってくる?」
そう、口からこぼれる様に言う薫は今にも泣き出しそうな子供のよう。
――――愛しくてしょうがない…。――――
剣心は捕まれている手を布団の中に入れた。
「大丈夫。すぐ戻ってくるから。薫殿は身体を休めて。」
「うん。」
言葉を聞いた薫は目を閉じた。
そのわずか数分後、剣心が戻ると、
―――…寝ている。よかった。
「薫殿、氷水持ってきたでござるよ。今布に染み込ませるゆえ…。」
「…あ、剣…、しん?」
独り言のはすが薫を起こしてしまったらしい…。
「悪いでござる…薫殿。起こしてしまい…。」
「全然、大丈夫、ケホッ…ケホッ、ゴホッ、」
しみこませた布を薫の額へのせる。
「剣心、さっきはごめんね…。」
「何がでござる?」
いきなり謝られてもなんのことやら……。
「氷水持ってきてくれるって言った時、私、変なこと言っちゃって……。」
『ど、どこにも、行かない?』
『すぐ、戻ってくる?』
あぁ、あのときの…。
そんな事を気にしているとは思わなかった。
「全然。逆に嬉しかったでござるよ。拙者を必要としてくれて。」
「でも、剣心に風邪、うつっちゃうかもしれないしさ…っ、もう、大丈夫だから、いいよ。」
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