*BL*
□Straighten your Heart
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「オイ、お前んトコの小僧がまた何かやらかしたらしいぞ」
人の顔を見るなり紫煙と一緒にゴシップを吐き出した髭面を見上げた。心配するというより「いい暇潰しのネタ」にニヤニヤと口元を綻ばせている
「五代目がお呼びだ。元上司も辛ぇな〜」
「…面白がってるでしょ?」
いい加減に暗記してしまいそうな愛読書を仕舞いつつ、言っても仕方の無い愚痴を口布の下へ留めて重い腰を上げる
緩ませた口元を取り繕いもせず、意味ありげな流し目を寄越すアスマに期待通りの言葉を投げかけてやった
「今度は何?」
「はは。まーた女絡みだとよ。あのガキよくやるもんだぜ」
「…女は遊郭だけにしとけってアレだけ言ったのにねぇ〜。ったく」
「それがなぁ、どうやら相手は遊女には違いねぇんだが…どっかの大名のお手付きだったらしくてな」
「……」
「身請けも決まって、やれお輿入れだってドンチャン騒ぎに紛れて…」
「ナルトが手ぇ出したの?」
「…だと思うだろ?それがなんと遊女が足抜けしちまったんだと」
「ちょっと待ってよ。それがどうしてナルトの責任になるのよ?」
「そりゃお前、あっさり捕まっちまった女が『ずっとお慕いしていたあの方に最後に一目…』なーんて余分な事…いや、今思えば、ありゃ狡賢い女の最後っ屁だったのかもしれねぇな」
「つまり、可愛さ余って憎さ百倍ってヤツ?自分に靡かない男を足抜けの大義名分に仕立て上げて…」
「何かしらのしっぺ返しを食らわせてやろうって魂胆だったんだろうなぁ」
何がどうしていつまでも子供のケツを追い掛け回さなきゃならないんだ…
上忍師としての役目は十分に果たしたと思っていたのに、気が付けば背丈も肩幅も追い越した悪ガキの尻拭いに東奔西走の毎日
未だ未成年とはいえ18歳は立派な大人。自分の後始末くらいは自分でして頂きたいもんだ
「失礼します」
重い気持ちで重いドアを開ければ、偉そうに金髪頭の後ろで腕を組んだ逆三角形が目の前に立ち塞がっていた
「カカシか。度々呼び付けてすまないな」
「いえ…」
「……」
真横に並んでもこちらに一瞥もくれず、さもすれば口笛でも吹き出しそうな雰囲気のナルトに、腹立たしさを超えた呆れを感じた
ったくコイツの頭には節操だとか罪悪感だとかって言葉が無いのだろうか。呼び出されるこっちの身にもなれっていうんだ
「アスマから聞いているかもしれんが」
「聞きました」
「そうか、なら話は早い。悪いが数週間…この馬鹿をお前に預かって貰いたいと思ってな」
「……は?」
「お前も承知の通り、今までも何度か特別監視を付けたんだがことごとく失敗している。このデカい図体をどうすればそんなに上手く隠せるのか…暗部小隊まで組んだ事もあったな?」
五代目の忌々しげな視線をどうやって勘違い出来るのか、誇らしげに胸を反らせ「へへへ。」と鼻の下を擦る
「……褒めてんじゃないんだよ!この大馬鹿者が!」
「わーかってるって!そんなに怒るなよ!言っただろ?夕菊はさぁ〜」
「遊女の話は聞き飽きたよ!お前はもうちょっと身持ちが固いと思ってたけどねぇ…まったく、一体誰に似たんだか…」
溜息を吐きながら茶色い瞳がちらりとこちらを窺ったが、こんなモン押し付けられちゃ堪らないと思い切り顔に出している俺を見てもう一度大きく息を吐いた