*BL*

□僕は 息をするように 君を
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俺は絶対にゲイなんかじゃない

それはもう明確に

セクシャルな意味で




男の体になんて微塵も欲情しないし、逆にそんな目で見てくる奴がいたら思い切り蹴り上げたくなる


なのに振り返ってみれば、心軋ませる程焦がれた相手は男しか思い当たらないなんて滑稽だ

だけどそれは決して性的な意味だけじゃないのだ、とちょっと格好悪く足掻いてみる



命を賭けた毎日の中で、共に闘う仲間へ背中を預ける行為は愛情にとても良く似た感情なのだと思う

体も心も命も、全てを任せるのだ。これが愛情以外ならなんだと言うんだ?

信頼?仲間?友情?違うでしょ。 いや、そういう言葉になんて少なくとも俺は自分の背中を預けようなんて思わない



「カカシ、僕は君を愛している。里も君も、全部全部だよ」



そう言ったくせに。あっさりと置いていかれてしまった

結局先生は全部守って、そうしてただ注ぐだけ注いで、俺が背中を完全に預け切った途端呆気なく逝ってしまった

その時の俺はといえば、振り返りもしない背中に向かって、なんで?どうして?俺も連れて行ってよ。と悲鳴に似た視線を注ぐ事しか出来なかった



てっぺんから爪先まで全部がボロボロと崩れてしまいそうになりながらも、頭を過ぎるのは「この人っていつもこうだ」なんて諦めや呆れや、下手すれば微笑ましくすらなっていたかもしれない

いつもいつも、どうでもいいことで
「どっちがいい?」
だとか
「カカシが決めてよ」
とてんで大人らしからぬ言動を恥ずかしげもなく晒す癖に、一番大事な事は結局黙ってひとりで決めてしまうのだ

結婚も人生の幕引きも



あの人はそういう意味でとても大人だった




愛情っていう物は一方的じゃダメ。注ぐなら、それへの反応も受け止めなくちゃダメでしょ。っていうのが俺の持論

愛してるって言い逃げするのはエゴでしかない。だったらそもそも言わなきゃいいんだよ

「俺は愛していない」とか「俺も愛してる」っていう明確な返事を受け止めずに済む様に自己防衛をしているだけだ

せめて「どういう意味で?」位は聞かせて欲しかったよね



とにかくそんな物は臆病者の愛し方だ。あなたが何て言おうが僕は勝手に愛しますから、返事はいりません。だなんて二度と誰かに言わせて堪るか


置いて行く方はすっきりして気持ち良く逝けるのかもしれないけど、置いて行かれたこっちの気分は最悪

どんなに願っても二度と会えないというのに想いばかりが募るあの感情の波に、身も心も引き裂かれるのは一度きりでもう沢山
 
 
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