*BL*

□The World
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「恋多き男」と呼ばれる事には何の抵抗も感じなかった。

人にそう言われるだけの…回数、だろうか?人数?
…とにかく数はそれなりこなしていただろうし、実際そういう事柄において「不足」したりだとか「飢えた」覚えなどついぞ無い。

ただ、それが「恋」なのかと聞かれれば俺は迷わず「違うね」と答えたと思う。

幸運にもヘイ!恋してるか〜い?なんて聞いて来る輩は居なかったし、当然俺自身からあれは生理的欲求に基づく排泄行為であって断じて恋なんかではない。などと声高に叫ぶ事などありえない。

つまり。

ソレは感情とは遠い位置ではあったけれどそんなに悪いイメージを伴う物ではなく、汚名ではなかった。


「先生ってばモテんのになんで彼女とか作んねーの?」

健やかにそれはもう真っ直ぐと育った元教え子がまったく腑に落ちない、といった表情で覗き込んで来た。

わざわざ、手の中の本と忍服の間へと輝く黄金色のツンツン頭を捩じ込みながらもう子供とは呼べぬ逞しい体を器用に反転させるが…

数年前には難なくやってのけた芸当が今の彼にはとても難しい事の様に見えた。

「お前ねぇ、自分の体の大きさを考えなさいよ」
「いや、俺は変わってねーってば。先生の腹が出てきたんじゃないんデスか?」
「…」
「先生がこの手を…こう…」
「…そんなに離したら読めないでしょ」
「ってかよく飽きないね〜!いっつも読んでんじゃん!」
「うるさいよ」
「へーい」

何とか心地よいポジションへ落ち着いた髪が布地越しに太腿をちくちくと突ついた。
何とも…居た堪れない気持ちになる。この体勢をするにはお互いに年を取り過ぎている上にそもそも…

「…これ、端から見たらさぁ…」
「んー?恋人同士みたいじゃねー?」
「…勘弁してよ」
「いいじゃん。独身ですこぶる付きの良い男2人が真っ昼間から草っぱらで膝枕。里中の女の子が泣いちゃうかもね!」
「そういえば」
「ん?」
「お前最近モテるみたいじゃない」
「ゲー。誰が言ってんの、ソレ?」
「鼻顎二人が悔しそうにしてたよ」
「あーイズモさんとコテツさんか。こないださーナンパ勝負したんだよ。」
「平和だねぇ〜」
「違う違う。丁度あの、ホラ…デカイ任務が終わった後でさ」
「波の国?」
「うん。あー、本当にアレってばキツかったー」
「そうなの?犠牲が出たとかは聞かなかったけどな〜」
「や、任務はさ、普通のAランクだったんだけど…」
「うん?」
「真夏のビーチだぜ?」
「…」
「ビキニでキャピキャピしてる女の子達を遠目に見ながら泥まみれの暗殺任務なんてやるモンじゃねぇなー」
「…」
「しかも3ヶ月なんつー長い諜報期間があったもんだから、んもう解散号令が掛かった瞬間にみんな血塗れ忍服放り投げて海に飛び込んじゃってさー」
「ふぅん」
「ま〜そこでコテツさんとイズモさんと『誰が一番たくさん女の子を引っ掛けられるか』ってなった訳ですよ」
「お前が圧勝したらしいね。」
「まーね」

生意気に、大して気にもしていない声色で肯定してから閉じていた瞳を眩しそうに薄く開き見上げて来た。

「妬けた?」
「はぁ?なんで俺が…」
「世代交代ですよ!『元』木ノ葉代表色男さん!」
「…」

ああ、そっちね。アホか、俺は。

てっきり…女の子にモテモテのこいつに俺が焼きもちを妬いたか?と聞かれたのかと思ってしまった自分の思考回路にため息。

いや、そもそもコイツの語彙の貧困さに問題があるんだ。妬いた?っつーのは正しい言葉選びじゃないでしょ。

「いいね、名誉ある王冠をお前に託すよ。名を汚す様な失態晒すんじゃないよ」
「お〜余裕ですね〜」

ニシシシ。と真っ白な歯を剥き出しにする。

その、木ノ葉代表新旧2大色男がこんなトコで男同士膝枕だなんて五代目が見たらひっくり返るだろーね。
 
 
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