*BL*
□例えば
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「……」
「…この道はやべぇな〜」
「……」
「あんまりスピード出すとコケそうだからゆっくり行かねーと!」
「……」
ジロッと睨む視線は気付かないフリでやり過ごすに限る。
それでもあまり突飛であからさまな行動をすれば立ち上がり歩き去ってしまう事は判っているから
『そういうんじゃねーよ。俺は無邪気に遊んでんの』とアピールするように腿から少し外側へ指先バイクを走らせた。
「ぶるんぶるん!ここから見る景色は最高だってばよ〜」
「……」
床に着けていた頭を起こし、空いているコースにさりげなーく置いてみる。
つまり先生の右足。俺から見れば左側の練習コースってトコか。
「……」
「よーし、休憩はこの位にしてそろそろ行くかー」
ぶぅぅん。と出発前の一吹かしをした俺に『ふっ…』と笑ってから再びエロ本に視線を戻した雰囲気。
うし。このまま行けば…目的地までもう一息。でも焦るなよ俺。慎重に慎重に。
左手を細くしなやかな腰へそーっと回しながら
バイクと言うよりもむしろ競馬場のゲートの中でいきりたった馬みたいに
先生の皮膚に添えた二本指の内一本でガリガリと布地を擦った。
「…くすぐったいって言ってるでしょ」
「さー出発ー!」
上手い具合に誤魔化しながら伸ばした腕はぐるりと背中をくぐり反対側の腰へ辿り着いた。
括れを強調させる為だけに存在しているかのよう、綺麗なラインを描く腰骨
(当然今はスウェットで隠れているけど)
そこへクッと指を掛ければもう一度ピクリと足全体が動いた。
「……」
「…ぶうーん…ブロンブロン!」
ギリギリ駆け引きをしている間にも指バイクは峠を越え、谷深い場所へ差し掛かっている。
気は抜けない。下手したら命を失うかもしれない魔のカーブ。
爪立てていた指先を寝かせ強く緩く、道を確かめながら敏感なる谷底へゆっくりゆっくりと進めて行く。
「っ…コラ…」
「シッ。コケたら俺死ぬってばよ」
「コケるって…あっ…この…!」
「シー。先生、見てて。俺の走り屋的スーパーテク」
「…っ…」
こうなったら後は堂々と。腿に乗せていた頭を起こし、背中側の腕で腰ごとグイッと引き寄せた先生の体を胡坐で抱えるように抱き込む。
一瞬勝負。