*BL*
□咲け、わたしの中の花
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「おいで」
「・・・」
幾度と無く思い描いた剥き出しの背中も初めて見る素顔もまるで現実味の無いまま
するすると先生の手で脱がされては床へ落ちるお気に入りの服を情けない気持ちで眺めていたら
下ろしたての真新しさが分かる生地が惨めで 泣いてしまいそうだった
目頭の辺りへ力を込めながらもう二度とは訪れないだろう機会を必死に頭から追い出し
昨日テレビでやっていたくだらないドラマの荒筋を思い浮かべては焼け付いた様に熱く喉元へ込み上げてくる感情を堪え留めた。
辛うじて涙を塞き止めた物は、この行為が「忍としての通過点」であるという決定的な事実と
こうして男女の契りを交わして尚わたしは先生と今後も元師弟として最低限の繋がりを失いたくはないという浅ましさだった。
「・・・っ」
「声も出していいよ?」
事務的ではないのだけれど格別に感情も込めずに、未だ誰にも触れさせたことの無い胸の先端へ形良い口唇が張り付く
かつてナルトやサスケ君と「一体どんな口元だろうか」と子供らしい好奇心で想像をしていたカカシ先生の素顔はわたし達が予想や期待していた顔立ちの遥か上を行って美しく整っていた
華美な美しさではなく、あくまで控えめでひっそりと
いつか本で読んだ事のあった、陽を嫌い夜に咲く美しい花を連想させた
(一度もその花を目にしたことなど無いにも関わらず)
もっと、わたしがそう多くない人生経験の中でそれでも何度かは見た事のある「男の目」を見せてくれればいいのにと願えば
この選択はもしかしたらとんでもない間違いではないだろうか、と背筋にぞっとしたものが走った。