*BL*

□Junk&拍手ログ
5ページ/13ページ

【四カカ】




「俺、暗部に行きます」


「行きたい」でもなく「行ってもいいか」でもなく。
もう決まった事を、彼はただ伝えに来ただけだった。

あらゆる方面からの圧力を、里最高権力の名で抑え付けていた。

望まれるだけの力と、多種多様な任務へ使用可能なその美貌

それらがこの里の大いなる財産になる事など百も承知だ。


「…喜んでくれないんですか?」


真新しい暗部服で身を包んだ彼は凛とした外見に似つかわしくない震える声を出した。

自分の決断がこの沈黙を生み出した事に素早く気付き
僕からの拒絶を徹底的に恐怖している。

喜ぶべきなのだ。それも承知の上で僕はただおし黙る。


君は経験を積むべき若き忍
最年少暗部入隊の誉れ
増えた手札から繋ぐ里の安寧


それらを全部以ってしても、目に入るのはただ
未だ赤く腫れを残す 刻みたての刻印
か細く白い腕に 一生残るであろう疵


「……」
「…四代目?」

せんせい、と呼ぶのを頑なに拒む君。
どうして僕は君の、君だけの先生でいられなかったのだろう。

選んだと同時に何もかもを失った気分にさせたのは君の変化だ。

僕は今、君に何を言える?



「俺は…」

「ただ」

「あなたの役に立ちたいだけなんです」



里の為なんかじゃない、と続けた唇は微かに震え、シンと静まる空気をぐにゃりと曲げた。

たった数メートルしか離れていない二人の間には沢山の物が横たわっていて
どこに足を踏み入れてもずぶずぶと飲み込まれてしまいそうだ。
だったらいっそ、ふたり同時に踏み込んで

真ん中で抱き合ったまま沈んでしまおうか。



「カカシ。」
「…はい」
「僕が…」
「……」

「僕が『1、2、3』って言うからこっちにジャンプしてみて?」
「……はぁ?」
「いいから!」
「……」


ニッと、歯を見せてやったなら薄闇の中で色違いの瞳がきらりと微笑んだ。


罠に掛けたと怒るだろうか?
ふざけ過ぎです、と唇を尖らせるだろうか?
だってこうでもしなきゃ僕らはずっとこのまま。


君が捧げてくれた刻印に誓う
僕が命を投げ出す時は君。

君だけを想うと。



さあ!呆れ顔に向かって思い切り叫べ!




End
戻る

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ