*BL*

□Junk&拍手ログ
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【ナルカカ】




あー、俺ってワガママ。



見慣れた景色の中で、小さく俯いた女の子の頭が揺れるのを見ながらしみじみと思った

数歩離れた場所でこれまた同じ様に俯き加減の金髪頭へ「バーカ」と口を動かすと野生の勘だけは一人前に働くらしくふいとこちらを見上げる



「・・・・・・」



俺に気付いた瞬間、充分距離を保っていた二人の空間を更に数歩後退りし不自然な程大きく開けた。それから慌しく未だ俯いたままの女の子へ二言三言言葉を掛け、逃げる様に姿を消しやがった


ギリギリ及第点



「な、なに見てんだよ!?」

「・・・早いねェ」

「カールも真っ青の猛ダッシュだろ?・・・じゃなくて!何で見てんだってばよ!」

「見ちゃいけないの?」

「いけないって言うか・・・い、嫌なモンだろ?」

「別に〜俺は平気だよ?」

「それもちょっとヘコむんですけど・・・」



まあいいじゃないの。女の涙は男の勲章だね、と僅かに高い位置にある頭へ無理矢理な大人ぶりで手を乗せてやると案の定恨めしそうな目でこちらを見下ろす


ガヤガヤと聞こえてきたその他大勢の声がする方向へちらりとそれを動かしてから目にも留まらぬ速さで口布が下ろされた



「・・・・・・」

「隙ありっ!へっへー。今日は俺遅くなるから先に寝てて!」



曲がり角から誰かの忍服が見える寸前で口唇が離れるのと同時に口布もキチンと元の位置へ戻される

見事な早業に思わず視界を細くすれば身を翻した一瞬に満足気な笑顔が見えた






「あれってやっぱり告白だよな〜」



一人分の飯が乗ったちゃぶ台をぼうっと見詰めたままどんなに待っても湧いて来ない食欲にいよいよ降参し片付けてしまおうか、と思うと同時ごくごく自然にまるで関係の無い事柄が口から漏れた



「・・・うわ」



自分で自分の言動がショック過ぎて立ち上がりかけていた体がよろめく



いや、気にしていること自体は別に構わない筈だ。色々な問題、というか性別の壁や元師弟という偏見や壁はあるものの、なんとか恋人同士、と呼べる程度の関係を築いているのだから


こういう関係になった経緯は、傍目も振らずに突っ走ってくるあの勢いに勝てる奴がいたらお目に掛かりたい。という言い訳で分かるだろう


雪崩に巻き込まれた人ってこんな気分かなぁ、と気炎と威勢で追い詰めてきた時の表情を思い出したら今度は自然と頬が緩んだ




ああ、やばい。俺、恋してんの?




ガクリと肩を落としてから、飯を睨み付けたまま目を見開いたりニヤけたり肩を落とす三十路男を客観的に想像し、余計に気が滅入った

いやこれはいよいよ本当に取り返しがつかないな・・・

 
 
 

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