*BL*
□Junk&拍手ログ
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【無題】//四←カカ
「先生が死んだ日」
きっとこのまま死んでしまうと思った。
後を追おうとかそんなんじゃない。
そうじゃなくてただこのまま自分という存在は消えてしまうんじゃないかと
それはもう情けないくらいに依存していたんだと知ったのはあの日
そりゃ先生は大事だった。親父を亡くしてからといえば自分で振り返ってみても「ひどいな」と思う素行だった。
他人と口をきくことなど任務以外では一切無く
いい加減にしろよと頭を叩きたくなる塞ぎ込みっぷりだったって今なら笑って言える。
そうやって過去を笑える強さをくれたのがあの人。
失った日
俺は泣かなかった。泣かなかったっていうのはただの経緯だ。
それ自体は何も悲劇なんかじゃない。世の中には意外と「泣かない人」は多いからね。
じゃあ何が俺にとっての悲劇だったのかといえば
どうしたらいいのか全然 それはもう笑ってしまいそうに全く判らなかったこと。
泣くという行為も理由も思いつかず、でも何かしたくて、しなければ世界が終わってしまいそうな衝動に突き動かされて
殺して殺して 死んでしまった人を思い出さない為に
もっと殺してどんどん殺して それはあの人が守りたかったこの里の為だって
そんな理由みたいな言い訳みたいな 嘘みたいな夢みたいな物に縋り付いていた。
でもやっぱり腹の中の塊は一向に消えないんだ。ホント笑える。
いつでもずっとそこにある「ソレ」はどうしていいのか判らない俺を嘲笑うかのように首を擡げては内側から身体中を突き回った。
皆が俺の中の塊に付けた名前は「悲しみ」だったり「自暴自棄」だったり。
そんな呼び名なんていらないんだよ!とまた新しい塊を増殖させてはブチブチと雑草を毟り取る気安さで人間を殺した。
そうすれば救われる様な気がした。
違うんだよ、俺は自分が血も涙もない人間だと言いたい訳じゃないんだ。
どんどん殺して罪悪感だとか後ろめたさだとか罪深さが増えて行けば行くほどおかしい事に気が楽になってきた、って事。
ま、信じてなんかいないけど、もしも神様がいるっていうなら
その人に俺は狂おしい程愛されているかこっ酷く嫌われているかのどちらかだ。
大切だとか、大事だと思った物や人は呆気なく取り上げる癖に
何度生還不可能だと呼ばれる任務に赴いたって俺はこうして今も生きている。生かされている。
「明日」が誰かの希望になる事はとてもよく知っていたけれど俺にとっての「明日」は全く違う意味だった。
思い出さない様にすればする程その行為は思い出すきっかけにしかならず
本当に何でもない事にまで先生の影を見るし、それこそそれは俺がこの世に身を置いている限り着いて回るんだ。
だってあの人は里とか人とかそんなちっぽけな物じゃなくて全部を愛していたから。
下手したらあの九尾すらをも愛してるって言っちゃいそうな人だったんだよ。
まあそれでさ、生きてるのか死んでるのか良くわかんないまま
やっぱり生きてたんだ、俺は。飯も食うし任務もこなす。
たまに酒だって飲んだし、普通に笑って、そうしてどんどんどんどん生きた。
で、ふと思ったんだ。ああ、俺は死んだりしないって。
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