*BL*

□spoiled
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「カカシさん、また零してる」

「本当ですか?」


見当違いに、胡坐をかいた場所をキョロキョロと見回す彼の、胸元に付いていたご飯粒を摘み取ると

そのまま目の前にある焼き魚の乗った皿の縁へ擦りつけた。


「すみません…」

「いいえ」


ぺこりと頭を下げてから目尻も下げ、困った様にも見える笑顔を向けてきた。

何もかもに秀でているこの男が、家ではこんな風に無防備に笑う事を一体何人の人間が知っているのだろう?


「…?まだ付いてます?」

「…いえ」


思わず見入ってしまった事を本人に悟らされて、極まりが悪くなった。

誤魔化すように、止まっていた箸を茶碗に突き刺して勢い良くかき込む。



この劣等感に似た気持ちは何だろう?

焦るようなもどかしいような。

それでいて手を伸ばす事を躊躇うような。



「俺は、イルカ先生のお陰で身体を壊さずにいるようなモンですね〜」

「そうですか?」

「だって先生がこうやってメシを食わせてくれなかったらきっと栄養失調で倒れてますって」

「そんな事になったら火影様に叱られますね」

「ま、こうして毎晩招待して貰えている間は大丈夫ですけどね」



ウソだ。あなたが俺よりずっと料理が上手いんだって知ってますよ?

嘘だと判り切っている言葉に 腹の奥がサワサワとくすぐったくなった。


こうしてあなたを呼ぶようになって、男の癖に料理の本を買ったり

あなたの好物を知れば、気紛れを装い頻繁に食卓へ上らせてみたり。



「最近ずっと秋刀魚ですね〜」

「季節だから安かったんです。流石にこう毎日じゃ飽きてきたんじゃないんですか?」

「いえいえ!イルカ先生と食べれば何でも美味しいです!これからも毎日秋刀魚でも全然構いませんよ」

「毎日…は俺が嫌です」

「でしょーね」



うんざり。という表情を作った俺に、また人懐っこい笑顔を向けた。
 
 
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