*BL*
□TGIF
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「先生は嘘つきだ!」
大好きだと言ったのと同じ口で俺を罵りながら、おかしいかな、その手はしっかりと手首を掴み離さない。
早足で進む背中を見ながら引き摺られるように歩調を合わせる俺も俺だな
ナルト、ひとりで帰りなよ。そう言ったらきっと平手が飛んでくるんだ。
逃げられない訳じゃないのに逃げない事とかそんなのはもうどうでもいいし
そもそも俺はこいつを好きなんだろうか、なんて。
そんな簡単な事ですら判らなくなってしまっている。
薄いTシャツに浮き上がる筋肉、数年前とは明らかに違う体躯
強い肉体に強い精神が宿るというのを体現してるなぁ
いや待てよ、逆か。こいつチビの癖にやたらと気が強かったっけ。
やっと身体が精神に追いついたって事か…
「めちゃくちゃにヤってやる」
とりとめない思考を現実に縛り付ける。
何とも真っ直ぐでコイツらしい言葉遣いだけどさ
あーあー。もっと色気のある言い方は出来ないのかね。
「先生が泣いてひぃひぃ言ったって止めない」
耳に入ったのは愛の言葉みたいなのに
ぐいぐい引っ張っていた手がふいに離された事で地獄の底に叩き落されるような不安がぶわっと。それはもうぶわりと
胸の中の隅から隅まで広がって一瞬で頭が真っ白になった
振り返った顔は夕日に染まり赤く光る。
「駄目だ。あんな事言ったって先生は俺を遠ざけたりなんか出来ないんだからな」
「……」
「アンタが別れてくれなきゃ俺を殺すって言ったって、嫌だ」
「ナルト…」
「先生には俺が必要で、俺には先生が必要。それだけ。ハイ終わり!」
「…何よ、その自分勝手な言い草…」
ニカッと。
清々しい程真っ白な歯を剥き出しにしたまま、頬骨の浮いた、若者らしく血色のいい肌が目の前に迫れば
ぶっちゅーっと音を立てそうに口唇を塞がれた。
「コラ…!な……ルト!」
「んー。きこへなーひ。んーーー」
「おま……っ…ん…」
どさくさに紛れてぎゅうと回された腕に背骨が撓りそうな程抱き締められる
歯列を割る舌先を拒み切れずに受け入れるものの、そこは大人の意地というか、少しでも優位に立ちたいという恋に溺れた者特有の自尊心だろうか。
「噛み切ったりするのは可哀相だから受け入れるんだぞ」とでも言いたげに自分からは絡ませない。
ああ、何でこんなにコイツに弱いんだろう。
いつの間にか俺より1.5倍は太くなった腕にしっかり掴まって。膝から崩れ落ちたりしない様に自分の身体を支えた。
重なったままの口唇がニッと笑うのが悔しい。
「……っ」
「やべぇ……マジでシたくなってきちゃった」
「…俺は死にたくなってきたよ」
「いやーだね。俺はこんなに可愛くてェロい先生を死なせないよ」
「…ばか」
「うん。俺はバカなの。先生バカ」
「…はぁぁぁ。」
整わない息を更に乱す口付けを続けざまに受け止めれば隠し切れない身体の昂ぶりをナルトに気付かれてしまった様だ。
「…あ。」
「…何だよ」
「せんせーってばやーらしー」
「お前ね、本当に怒るよ?」
「うそうそ!ごめんってば。ね、早く帰ろうぜ。そんで抱き合おう」
「……」
「わ。何その嫌そうな顔!素直じゃねーなー」
「……」
「…怒った?ね、先生怒った?」
「怒ってないよ」
「ゲッ。マジで怒ってるね?ごめんって!ね、サービスするから許してー」
ゴンッと鈍い音で拳を受け止めながらニィっと向日葵みたいな笑顔を向ける。
ほんっと色気の欠片もない子だね、お前は。誰かさんにそっくりだ。