*BL*

□名も無き感情の狭間で僕らはただ途方に暮れる
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薄っすらとかかった雲の隙間から三色の光が覗く朝焼けの中、里への帰路を急ぐでもなく淡々と進む



やってしまった




日の昇りかけた方角へひた走り、任務中に思いを馳せた人の顔を浮かべた




ここ数日ずっと気になっていたSランク任務。それは予想通りの困難さを伴っていた。通常ならばスリーマンセルを組むべき暗殺任務


渋るイルカ先生をゴリ押しして単独に変更して貰ったのだ。ソレくらいのプレッシャーが無くちゃ遣り甲斐がねぇよ、と笑った俺に

「生き急ぐなよナルト。お前はちゃんと成長してるから大丈夫だ」

なーんていかにも教師らしい事を言った




強く、強くなりたい

誰よりも



どんな物にも負けない力が欲しい

守れる力が。欲しい物を手に入れられる力が


場数をこなし、死線を突破し、確実に任務を遂行する。それ以外にはもう出来る事など残っていないから。

自分の力に見合う術は全て習得し、日常鍛錬や新術開発にも余念が無い。高ランクの任務をやたらに受け、戦場の息吹を頭に叩き込みながら高みだけを目指す。

それしか、残っていないんだ




ごくたまに依頼がキャンセルとなり突発的なオフが舞い込む。そんな時はただぼぅっと部屋の天井を見詰めて過ごした。サクラちゃんは忙しくサスケは任務、イルカ先生はアカデミー

他の奴らとつるんで女の話や食い物、洋服や音楽で時間を潰すのには飽き飽きしていて

どっか静かな所で既に何度やっても百発百中の的当てでもしようと思いフラフラ歩いて。気付けば誰もいない演習場にぼうっと突っ立ち、懐かしの三本丸太を見詰めていた




俺と先生とサスケとサクラちゃん

あの頃背丈の届かなかった丸太のてっぺんへ掌を翳し、そうして同じ高さから景色を見てみた

こんなに小さかったんだな。どんな気持ちだったんだろうと、丸太に翳していた手をそのまま自分の腰辺りへ添えてみる


自分の半分しかない大きさの子供なんて、どう考えたって対等に見れる訳がねぇ


ガキだガキだと事ある毎に口にする先生の気持ちがやっと分かって少し笑った
 
 
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