*BL*
□名も無き感情の狭間で僕らはただ途方に暮れる
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「よっ!なーにしてんの?」
「……ちー…っす」
「うわ。暗いねぇ〜」
「……」
「どうしたのよ、お前らしくないじゃない」
「……」
「なに?任務失敗でもした?」
「……た」
「え?」
「別れた。」
「…サクラと?」
「……」
子供っぽく三角座りをしたまま、膝頭につけた頭をコクコク揺すると「ったく…」なんて呟きと一緒に芝生が折れる音がした。
「ま、そういう事もあるよ」
「……」
「…フラれたの?」
「……」
もう一度コクコクと頭を揺さ振れば、昔と変わらぬ大きく優しい手が髪をくしゃりと掻き混ぜてくれる。
先生、もう見合いした?って言葉が喉の一番手前にあるのに、聞いたらまた頭がおかしくなりそうでただむっつりと黙りこくる。
もう、何度目だろう。
言いたい言葉を飲み込む事ばかりがやたらと上手くなって来た。
「ふん、まあ…まだ若いんだしさ」
「先生は?」
「ん?」
「先生は、若くねえの?」
「…うーん。お前聞き難いコトをズバッと聞くねぇ!」
さすが意外性ナンバーワン!なんて茶化しながら「まだまだ若いよ」と口布の下で唇を動かした。
どうして顔を隠すのか、と聞いたら「隠してるつもりはないんだけどな〜」と笑ったし、どうして彼女を作らないのかと聞いた時も「縁が無いだけだよ」と笑った。いつもいつも笑って。
最後に真剣な言葉をくれたのは一体いつだっただろう、などと考えていた。
俺は、先生のことばかりだ。どうして、いつ、なんで、誰と。
先生がどうしているのか知りたくて受付でイルカ先生に聞いてみたら「もうずっと休みを取ってないな」と、心配そうに眉を顰めてから「お前も早く、カカシさんみたいになってあの人に楽させてやれ」と笑った。
カカシ先生とは違う、笑顔で。
「若いって、面倒臭いね」
「そう?そう、かもねぇ〜…」
考えても考えても答えの出ない事ばかりが頭の中に詰まっている。息が詰まりそうになるのに、詰まらなくて、やっぱり俺はちゃんと息をしている。
サクラちゃんと話した内容も明日のちょっとキツイ任務も全部保留して、こうしてボーッとしていたい気分だ。
例え何の解決にならないとしても。
実際そうしたいと思っているんだからきっとそうした方がいいに決まってる。