*BL*
□BLで20題
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【手紙】
それは最初で最後の手紙
『ちゃんとした手紙なんて書くのは久し振りだからおかしいかもしれないけど』
そんな書き出しで始まっていた。
『お前はもう忘れてしまったかもしれないから、これは俺自身の為に書くことにするよ』
忘れる訳ねぇだろ。
『あれからずっと、お前が俺の言葉をどう受けとっただろうと考えてる。
言葉通りに受け取っているのならそれでいい。そうじゃなくてもそれでいいやとも思う』
なんだよそれ。ホント先生ってよくわかんねーなぁ。
『ここは寒い。立っているだけで足元から霜が張って血まで凍っちゃいそうだよ』
話飛んでるし。
『こうして一人でいると、もうずっとこの冬しかない国で生きてきたんじゃないかと錯覚しそうになる』
それホント錯覚だから。俺と海行ったじゃん。暑い!って騒いでたじゃねーか。
日焼けして真っ赤になった肩と背中は今目を閉じただけですぐに浮かぶぜ?
ちょっとフザけて手を伸ばした俺に「触るな!」って本気の蹴り入れたクセに。
『えーと、何の話だったかな?』
デタ。この人ほんっと天然!
『ああ、そうだ。それで、だ。その、俺がお前に言った事だけど』
来るぞ。
『ちょっと早まったかな〜と思ってる』
・・・・・・。
『お前はまだ若くて、夢や未来があって。俺はもうこんなおっさんで』
『それでもいいと言ってくれるのは有難いんだけどやっぱり俺は、お前を俺なんていうちっぽけな物に縛り付けたくないんだ』
それはいわゆる「価値観の違い」ってヤツですか?
『お前に殴られて結構ショックだったってゆーのもあるんだけど』
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。あーーっホント俺最低・・・。
『最低なヤツだな!とも思ったし、分からず屋で頭でっかちで人の気持ちを汲めない大馬鹿野郎で』
ごもっともです、はい。返す言葉もありませんってば・・・。
『でも、切れた口の中がこっちにいる間にどんどん治って・・・血の味がしなくなって』
うん。
『木ノ葉の暖かさを忘れてしまいそうになるみたいに、お前の事もこうして忘れちゃうのかな〜って思って』
・・・・・・。
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