*BL*

□BLで20題
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【もう一回】



「もう止めなさいって」

「いんや!もう一回だけ・・・!」

「何回やったって変わらないよ」

「そんなの分かんねぇだろ?」


ったく。いくらお前が俺よりずっとずっと重い筋肉を腕に纏ったとしても

これはそういうモンじゃないの。なんつーか、コツがあるのよ。


「レディ・・・ゴーッ!」

「・・・」


ギギギっと歯を噛み締めながら必死に体を傾けるけれど俺の腕は少しも傾がない

コツは手首のスナップ。そんなに上向きに反らしてたら力が全部逃げちゃうんだって


「・・・っ・・・くっそ・・・」

「・・・」


はは。それも減点〜。声出したら力が緩んで当然

その一瞬をついてクッと内側へ折り込んだ手首ごとテーブルへ叩きつけてやる


「また負けたーっ!」

「だーから言ったでしょ?」

「何で!?だってよぉ、俺の腕の方が全然太いのにさぁ」

「筋肉じゃないの。ここだよ」


コンコン、とこめかみを突いた指を恨めしそうに睨んで


「んじゃ一生勝てねーじゃん!」

「ちょ・・・認めるんじゃないよ!」


不貞腐った顔であっさり納得したりするところが憎めない。

後ろ手についた腕で体を支えたまま「あーあ。今日も駄目か〜」と情けない顔。


「あのさ、腕相撲以外じゃ不味いワケ?」

「例えば?」

「そうだな〜ジャンケンとかどう?」

「俺はそんなに安くありませんー」

「ちぇっ」


いつの間にか当たり前になってしまったやりとりは大きな声で言えない内容。

「付き合ってよ!」と唐突に言い出したコイツに、嫌だダメだふざけんなと情け容赦ない拒絶をしたというのに

めげる所か「んじゃ何か勝負して俺が勝ったら付き合って?」と今思い返せばどうしてそんな物を受け入れてしまったのか分からないような妥協案を提示されて。



腕相撲ごときで俺が手に入るってのも大概安いでしょ?



それ以来毎日「勝負」しにウチへ来るコイツとか、律儀に真っ直ぐ家へ帰って待っている自分とか、向き合っていると見惚れてしまいそうな頬骨や額も

もう少しこの距離を保ったまま見ていたい気分なんだ。


「もう一回!」

「だから〜無駄だって」

「いや。これってさ〜クセになんの」

「・・・?」

「堂々と先生の手を握れちゃうだろ?」

「・・・」


ニヤァと笑う顔に「アホか」と呟きながら

そういう事言われると負けたくなっちゃうじゃないの。と俯いた。





End
2007/02/13
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