*BL*
□BLで20題
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【プレゼント】
疲れた。
泥の様に眠りたい。何も考えずにただひたすら眠って忘れてしまえばいい。
今日、この手を染めた血の色も、命乞いをする眼差しも。
「おかえりなさい」
「…戻りました」
こんな日は、あなたの顔を見るのも辛い。
違う。あなただからこそ見せたくない。見られたくない。こんなものをあなたの元へ運び込む自分を消してしまいたくなる。
「お風呂入りますか?」
「はい」
血塗れの服を嫌な顔ひとつせず脱がされればまた、こんな事に慣れさせてしまう自分が憎くなった。
俺はあなたに何かを与えられていますか?
貰う物はいつも泣けるほど温かいモノなのに。
俺が持ち込むモノは冷たく暗いモノばかりだ。
「…ありがとうございます」
「…?」
呟かれた言葉の場違いさに困惑した背中へ、ぺたりと額が押し付けられた
「こうして里の平和が守られているんだって、判っているんです」
「……」
「なのに…アナタが辛そうにしている姿を見るのはいつまで経っても慣れません」
「……」
違う。俺はあなたが思うほど優しい人間じゃないんです。命乞いをする人間を躊躇なく殺せてしまう。
あなたの為にしか痛まない心
冷たいと思われるかもしれないけれど、里の未来なんてどうでもいいと、そんな事よりもあなたにそんな顔をさせる方が大問題だなんて言ったら、呆れますか?
「こんな思いをして平和を贈ってくれるアナタに、俺も何かしてあげられればいいのに…」
何て、何て勘違い。
背中で微かに震える肌も、たった今放たれた言葉も
イルカ先生、知ってますか?
あなたは俺にとって、試練しかくれない神様がたったひとつくれたプレゼント。
End
06/10/08
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