□倦怠期
1ページ/1ページ



何と言うか、何とも言えない。
うざい、じれったい、馬鹿みたいだ、馬鹿野郎!
出てくるのはこんな悲しい言葉ばかり。
最低だ。
誰が?

それは、彼―――…ではないのかも。









此が属に言う倦怠期ならば、何とか改善せにゃならないのだろうけど、全くもってやる気がわかない。
相手の良かったところは思い出として素敵に浮かんでは消える。
それでも、会えば喧嘩。
気まずい空気がいたたまれなくなって、結局逃げるようにして別れる。その繰り返しだ。まったく救いようのない。
更に救いようのないところは「時間をおく。今は会わない方がいい」とでも言われたところだろうか。
時間をおく、って。
今は会わない方がいい、って。
俺たちが時間をおかないで会ったことなんて、一度もないじゃないか。
それがもし彼の中で「時間をおいていない」という範囲に入っているのなら、じゃあ今回はどれくらい会わないつもりなんだろう。
もう、一生なんてことも有り得るんじゃないだろうか。



「……あの、ボンゴレ十代目…?」

「…何だよ」

「い、今のは?」

「分からないの?その歳にもなって?はっ、冗談。キスだよキス」



けっ、と言葉を吐いたら、ランボは驚きに目を見開いていた。
そりゃそうだろう。
だって、今まで告白を断り続けられた相手に、こんな。




「はじめから、ランボにしとけばよかったのかも」



軽く酒も回って、だんだん気分がフワフワと地に足がつかない感じになってきた。
最低だと思う。今の自分が。
相手の気持を無視して。これじゃあ利用してるのと変わらないじゃないか。
でも。



今の俺だって、誰かにすがりたいことくらい、ある。

悪あがきだとか、言われても仕方がないんだろうけど。
ひとりだと耐えられないんだ。
なんだか、果てしなく虚しい。



「ボンゴレ…ツナ…」



ランボは困ったように笑って髪を撫でてくれる。
優しい。
あいつだって、確かにこんなことしてくれる時はあったさ。
俺が酒にのまれてベロンベロンになっても、介抱してくれたし、その後気分を落ち着かせて必ず頭を撫でてくれたけど。
けど。



「…ごめん、ランボ」

「いいですよ、別に。俺は構いません」

「お前、本当によく育ったよな…昔は手もつけられないくらいだったのに」

「はは、まぁ、あの時は。俺も大人になったんです。貴方を包み込めるくらいには、体も成長した」



思わずぎゅう、と抱きつけば、彼の付けていた香水の香りが鼻をつく。
それと、シャツ一枚の下に隠れた筋肉も分かる。
見た目は華奢なのに。

思えばあいつもそうだった。見た目はスラっとしてるのに、脱いだら…嫉妬するくらいには。
でも香水はつけてなかった。
というか、「嫌い」に近い部類。自分がつけないのはまだしも、俺がつけるのにもいい顔はしなかった。
…もう、どうでもいいけどさ。



「でも、俺も男です。優しいだけじゃいられないかもしれませんよ。今のボンゴレ、とても芯が弱いから」



くすくす、と頭上で笑い声が漏れていた。
何度も何度も交際を申し込んできたくらいだから、もう手段なんか選んでられないといった感じだ。
今押されてしまったら、俺、堪えられる自信、正直言ってない。





「ツナ、」





あまりに甘い声が耳をくすぐったかと思えば、ふいに世界が変わった。
あぁ、ソファに押し倒されたんだなぁ、とか思いながらランボの顔を見れば、何だか余裕そうな笑みを張り付かせている。
でも、瞳の中には鈍い光も見え隠れしていて。
そこらへんが脆いと思う。
これだから年下ってのは。
ズルイ。



「もう一度言いますけど。俺は、構わないんですからね」



ランボは本当に優しい子だ。
普通ならここで何も言わずビリビリ服を破ってもいいものを。
そんなことをされたら、揺らいでしまうではないか。



本格的に泣き出した俺の目尻にキスをして、ランボは涙を舐めとっていった。
それでも、涙はとめどなく溢れてくる。
なのに俺のぼやけた視界にうつるのは、やっぱりランボではなくて。

なぁ、スカル。



お前このままだと本当に俺、流されちゃうからな!




(ホントはかまって欲しいのに。だから君への最終忠告)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ