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□オカマ相談室
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とりあえず部屋に入ってきたオカマを追い出す体力も無いので早々に用件を飲むことにした綱吉は、仕方なく彼女だか彼だかよく分からん人間の前に腰を下ろすことにした。
相変わらず顔色はよろしくない。
「大丈夫〜?何だか顔色悪いわよ〜?」
「…あまり」
コトン、とルッスーリアに紅茶を出して綱吉は溜め息を吐く。
何故ドン自ら茶を用意しているのか。
そういうように仕込まれたからだ。
色々と。
家庭教師様のおかげでコーヒーなんかそこいらのショップより美味くできるようになったし、恋人のおかげで紅茶を極めることができた綱吉である。
他人から押し付けられ、要望されるのに慣れてしまった綱吉を咎めるものは誰もいない。
そりゃあもう紅茶なんて恋人の為にどれだけ入れただろうか。
多分アレだ。
例えると、『星の数』程入れた。
そんな紅茶を上品に飲んだルッスーリアは、心配そうに綱吉を眺める。
「体調不良?」
「えーっと…あの、」
「まさか、言えない事!?」
「い、いえっ、その!」
「なら、悩み事かしら?相談にならのるわよ〜!」
話を聞いてくれない楽しそうなルッスーリアに綱吉は泣きたくなった。
しかしそんな事などおかまい無しのルッスーリアは、綱吉の手をガシっと握って話を聞く態勢だ。
微妙な空気を漂わせたルッスーリアに綱吉は早くも根をあげる事になった。
そもそも彼女との至近距離での会話は正直キツイものがある。
「わ、分かりましたよっ!話しますっ!!話しますからぁあ!!」
思わず彼女を突き飛ばしてしまった綱吉だったが、まぁそこは心配ないだろう。
なんせあの筋肉。
素であれば綱吉も敵わないアレだ。
心配するほうが間違いである。
「うっ…」
言うと言ったはいいが、好奇心に染まった瞳に綱吉は戸惑った。
サングラスに隠れていれども、分かるものは分かるのだ。
そもそも綱吉の周りには何故か瞳を表に出さない人が幾らかいる。
例えば代表的なのに綱吉の恋人がいるが、それは過去のことになりつつある。
最近は綱吉が強制したため、メットは外してくれるようになったのだ。
「あらあら、顔が崩れてるわよ〜」
「おっと失敬!」
ピシピシと頬を叩いて恋人との記憶から抜け出してきた綱吉を見て、ルッスーリアはニヤリと笑った。
「分かっちゃったわ〜!ツナちゃんの悩み!」
「えっ」
「恋人との事でしょ〜!」
「そっ、そんなこと!な、ななな何で分かったんですか?!」
顔を真っ赤にして戸惑う綱吉は宛ら女子高生だ。
青くなったり赤くなったりとせわしない。
気力が底をついて逆にテンションが上がってしまったのだろうか。
綱吉はオカシクなっていた。
もはやハイにでもなんなきゃやってられない。
それに相談してスッキリすることだってある。
相談する相手は大切だが、彼女なら大丈夫だろう。
偏見もへったくれもなさそうだ。
「ルッスーリアさん、例えばですよ?例えば、あの、貴方が子どもを授かったとして…そしたら相手に素直に伝えますか?」
「ん〜、そうねぇ。私だったら伝えるけど」
「でも、拒否されたら、とか、考えません?」
「なるべくなら考えないようにするわねぇ。最悪そうなったら、相手を脅…納得させるだけだけどね!」
意外にもマトモな受け答えに感心しながらも、綱吉は近くにあったクッションを抱えこんだ。
「戦闘じゃ敵いそうにないんですってばー…」
惚れた弱味も手伝って自分は絶対に負ける自信があるし、しかも理由が理由なのでそんな喧嘩は嫌すぎる。
ふぅ、と小さく溜め息を吐いて綱吉は目を細める。
小さく震える睫が、本当に悩んでいる事をルッスーリアに知らせていた。
「大丈夫よ!どんなヤツかは知らないけど、ツナちゃんが選んだ相手じゃないの!自信もって!」
「うぅ…ルッスーリアさん、例えばの話ですよぅ」
「んも〜!嘘吐くのが下手くそなんだから!でもそこも可愛いわよ!このこのぉ!」
「い、いはいへふ」
尋常じゃない力でホッペをツンツンされた綱吉は、ルッスーリアの優しさに少しだけ泣いた。
「そうと決まったら早速連絡よ〜!電話は?何処?」
「でぇぇええ!?マジで言ってんですか!?いいですっ、自分で掛けますっ!!」
携帯を引っ張り出されてワイキャイ言っている間にも、冷や汗が頬を伝うのが分かる。
テンションが上がっていても、体調は最悪だ。
ルッスーリアはクスリと微笑んで綱吉の髪を撫でた。
「頑張らなきゃ、ボス!グスグズしてたらあの揉みあげ君、帰って来ちゃうんでしょう?」
「…はい」
「それに顔色悪い方が、相手も気を使うってモンよ!ツナちゃん可愛らしいから、ね!安心なさい!」
「そ、そうかな?」
上手く言葉にのせられた綱吉は携帯へと手を伸ばした。
ゴクリと生唾を飲み込む。
不安になり横を見れば、ルッスーリアが力強く頷いていた。
大丈夫、大丈夫。
そう自分自身に暗示をかけて綱吉は思いを込めてボタンを押していく。
緊張で、少しだけ空気が軋んだ気がした。