□チャチャぱろ!4
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さてはて仲直りした2人。
しかしスカルは面白くない。
誰だって存在を忘れられていいように話を進められては楽しくないだろう。



「ま、どんなに頑張ったってアンタらが最上階になんか行ける訳ない」

「うるせーぞコラ!」

「だったらやってみたらどーですか?」



フフン、とヤケになって勝ち誇ったように笑ったスカルに、ツナはムっとしながらも意識を切り替えることにした。
そうだ。
問題はそこじゃない。
スカルがどうこうより、どうやって上まで上るか。
それが問題である。

考えろ。
きっと何か手がある筈…、


そう考え込んでうつ向けば、生えてきたばかりの新芽が目に入る。

ふと、リボーンの声が蘇ってきた。



『ツナ、この芽に綺麗な花を咲かせてみろ』



…ん?



「そうだ!!コロネロ、スカル!分かったぞ!!」

「「何?!」」



顔のつねりあいをしていた2人は、ツナの声に同時に振り向く。
振り向いた先――…そこにはまるで天使の様な笑みが存在していた。



「何か静かだね」

「そうだな。あのコロネロとツナが居て有り得ねぇ」

「やっぱうちのスカルが勝ったんだって!やー、やっぱちがうね!さすが俺の弟子!」

「でもさっきコロネロに負けてたじゃねぇか」

「あれは死んだフリだったんだってば!負け惜しみすんな。それにいくら待っても助けは来ないしねー?ははっ、いい気味ぃ!」


キャタキャタと高笑いする綱吉は可愛いモンだが、同じ顔の人間が死んだという空想を造り上げても尚笑っている神経は流石だ。
それでも綱吉を愛し続けるリボーンもリボーンだが。



ズドン、と音がして二人は窓の外を見る。
そこには、みどりの大きな物体があった。
さっきまで無かったのに。



「あぁっ!いつのまにっ…!?」



ガバリ、と窓に乗り出して、綱吉が見たその先。



「あぁーっ。行きすぎたぁ」



とテンションを下げている同じ顔があった。
まるっきり同じだ。
幼いころの自分まんまだ。
リボーンが異常だということは常識として理解していたが、ここまでくるとゾっとするものがある。



「ちっ、生意気な!」



えいっ、と魔法で出した斤でみどりの、ジャックと豆の木みたいに伸びた気持ちの悪い植物を綱吉はカットした。
もちろん、綱吉とコロネロは優雅に落下する。



「ツナ!」

「コロネロっ!」



ガシッ、とツナの手を握ってコロネロは思いきりツナを空にぶん投げた。
行き先は彼方の窓まで。



「「うぎゃあああ!」」



見事にハモったダブル綱吉はもつれるように沈没した。
コロネロのシュートは見事に決まったのだ。

ツナは瞬時に飛び起きてコロネロの安否を確認するために窓の外を見た。
丁度コロネロが落ちていく所で、ツナは小さく悲鳴をあげる。



「コロネロぉっ!!」

「ツナぁ!!俺は一生懸命なツナが…大好きだぞコラぁあ!!」



一生一代の告白をしながら、コロネロは散っていった。



「あぁ〜…コロネロぉ、一生忘れないからなっ」



しかし残念ながらツナの中でコロネロは死んだと見なされた。
リボーンは先ほどからの一連を見て、ツナの行く末を不安に思ったが口にはしないでおこうと心に決める。
他人を勝手に殺す人種なんて知らない。
見なかったことにしよう。
この時点で、リボーンは完全に自分を棚にあげているが突っ込みの人間達は今てんやわんやでそれどころじゃなかった。



「つーか早く退いてくれ…」

「げっ、ごめんなさいっ!!」



ピョイ、と退いた所に綱吉が潰されていた。
ツナと綱吉は、まじまじとお互いの顔をみる。
何だか不思議な感じだ。
まるで、遠い親戚のような、そうでないような。
というか慣れないので「気持ちわりぃ」の一言につきた。
綱吉達はあまり自分の顔を気に入ってはいない。
周りに顔のいいヤツしか居ないのも問題である。
そもそも、綱吉はともかくツナはリボーンとコロネロしか知らなかったのだ。
そして新たに出来た知り合いがスカル。
これはもう呪われている感がいなめない。



「コロネロの仇うたせてもらう!」

「はは、この俺に勝てるかな?」



同じ顔が対立している。
リボーンは幸せだった。
ただ内容が駄目犬なだけに残念である。
本当はさっきの会話を「俺のリボーンを返して!」「絶対に駄目!リボーンは俺のだもん!」にしてほしかったのだが、今は口を出すべきではないだろう。
近年希に見ぬ魔法音痴対決だ。
被害は被りたくない。
良かった、魔力遮断機能付きの檻の中で。



「いざ、魔法で勝負!!」



先手必勝!と大人げなく笑って自分と同じ顔を攻撃する綱吉。
ツナがコロネロの仇をとるというのなら、こちらはスカルの仇だ。

ぼぼん、と煙が立ってそこに龍が現れた。
魔法音痴はもう過去のことだ。
憎きリボーンを倒すため、日々頑張り続けた。
その主な被害者という名の実験台はスカルである。
ここのところはコロネロと大差がないスカルだ。
コロネロも何度ツナに殺されかけたか知れない。



「そっちが龍ならこっちは虎だ!!えいっ!!」



龍にビビりながらも、綱吉は頑張っている。
頑張っているのだが。



「あれ?」

「違うじゃんっ!!」



現れたのは巨大なマンドリル。
中々最近聞かないし見ない代物だ。
2人で唖然としていると、マンドリルは勢いよく前足を蹴りあげ突進してきた。
その際に綱吉の出した龍がベシャっと潰されてしまったが、誰も気にする様子はない。



「「ぎゃぁあああ!こっち来んなぁ!!」」



結局2人で逃げ回ることになった綱吉達を見て、リボーンは頭痛を覚えた。
まったく何をやっているのか。



「消しゃあいいじゃねーか」

「あっ、そっか!」



リボーンの言葉に反応した綱吉は、ビビりながらもマンドリルに向き合い手をかざして祈った。



「消えろっ!!」



すると音を立てて、部屋に煙が充満した。
マンドリルの姿が見えないところをみると、無事消えたようである。
綱吉達は安堵の息を漏らした。



「な…なかなかやるな…!」

「ふ…ふふ…俺はリボーンの弟子だからね。甘くみてると痛い目みるぞ」



ひーひー、と息を切らしながら見栄を切るツナだがまったく説得力がない。
痛い目を見てるのは主に彼自身なのではないだろうか。



「…生きてますか?」



一方こちら、落下したコロネロとそれを見ていただけのスカル。
スカルは手を貸すことなく眺めているだけだが、コロネロは自力でムクリと起き出した。



「勝手に殺すなコラ!」

「いてっ!殴らないで下さいよっ!それに、もうツナの中じゃ先輩完璧ご臨終してますよ」

「…あぁ、」



若干テンションが下がったコロネロだが、こうしてはいられない。
まぁ言いたいことは言った。
伝わってるかは定かじゃないが。
コロネロは扉へ向き直った。
まだ鳩の鳴き声が聞こえている。



「どこ行くんですか?」

「ツナは上で頑張ってるからな。俺はレオンを探す」

「見付かりませんよ。何処にいるかも知らないのに。因みに言いますけど、俺も知らないですからね。綱吉が帰ってくるなり意気揚々と隠したから。…そんな明さまに「使えねぇな」って顔しないで下さい」



コロネロは舌打してスカルを蹴りあげる。
今ならツナが見てないのでイジメ放題だ。



「ま、いいぜ。俺の勘なめんなコラ」



自信ありげに笑ったコロネロを見て、スカルは納得した。
あぁ、なんか戦ってるとき犬に化けてたし元々コロネロは動物の血が濃いのかもしれない。



「んじゃ、あと宜しく頼むぜ」

「はい?」



キョトンとしているスカルをしりめに、コロネロは今一度扉を開いた。
すると少し扉と距離をとっていたダチョウがコロネロの存在に気付いて突進してくる。
コロネロもダチョウに向かって走って行き、そして自慢の脚力で器用に跳んだ。
いわゆる馬跳びというやつである。



「んなっ…!!」



そうなると自然にダチョウはコロネロの後ろに居るスカルに突進してくるわけで。



「マジで!?」



信じられない!という顔をしたスカルにコロネロはしてやったりの顔をした。
ツナを口説いた罰だ。
寧ろ軽いくらいである。



「ま、せーぜー頑張れよコラ」



コロネロはスカルを残して階段を探す。
城に拉致といったら地下だろう。
リボーンと一緒に捕えられている感じはしない。
ただ、全ては勘だけれども。

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