□チャチャぱろ!2
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所変わって隣の山に立っている綱吉の城。
まぁそれなりにデカイ。



「これで世界一の魔法使いは俺だ!やったー!」



キャイキャイと一人ではしゃぐ綱吉を見て、2人の男は溜め息を吐いた。

一人は呆れの、もう一人は感嘆に近い、寧ろ「萌え」とかそういう域のものだ。
そしてそんな溜め息を吐いた後者を綱吉は睨み付けた。



「お前は一生そこにいろ。出してなんかやらないからな」

「ほー。わざわざ自分の部屋に牢獄なんて作ってまー。結婚した方が早いぞ」

「聞こえなーい!何にも聞こえなーい!」



愉快にはしゃぐ師匠を見つめもう一度重々しい溜め息を吐いたのは、綱吉の弟子のスカルだ。
スカルはよく思う。
絶対自分は師匠を間違えた、と。
もっとちゃんとした人の所に入ればよかった、と。
ふと手元にあった水晶を見てみれば、何かが写っていた。



「…綱吉、なんか城に近付いてくるぞ。遊んでる場合じゃないだろう」

「あ、そうだ!うげっ、これリボーンの弟子じゃん!!」



写っていたのは、箒に跨り空を飛んでくるツナと、後ろに乗っているコロネロだった。



「綱吉に激似…」

「当たり前だろ、この俺様が選んだんだ。抜かりはないぞ」

「ちょっと捕虜は黙ってて」



ぶすっ、と膨れた綱吉に、スカルは哀れな目を向けた。



「何であんなストーカー連れてきたんだアンタ」

「仕方ないだろ!これから殺す予定だってば!餓死寸前、フラフラになったところを魔法でドカーン」

「…へぇ」



ズギュン!
スカルと綱吉の間を何かが通過した。
これは…銃弾だ。



「距離が近ぇぞ」



文句を言うリボーンにスカルはヒク、と口を吊り上げ、綱吉を睨み付けた。

何だこの凶悪な生き物。
つーか武器を持たせたまま牢屋に入れるなよ。
意味ないだろうが。
というか、今すぐもとあった場所に返してこい馬鹿野郎!!



綱吉はそんなこと言ったって!とか何とかヒソヒソ言っている。
気分は珍しい虫を捕まえてきた子供のようだ。
逃がしてあげなさいと言っているのに、めったに捕まえられないものを捕まえちゃったものだから、いつもより頑固になっている。
綱吉とスカルが言い合ってる間、リボーンは何と無く水晶を見て眉間に皺を寄せた。
そして小さく舌打をする。



「…ぶつかる」



瞬間、ズウゥーン、と少し城が揺れた。
ツナはまだ飛び方すら修業中で、ましてや二人乗りなんてしたことがなかった。

結果、コレである。


「…大丈夫?コロネロ」

「…お前、後で殺す」



2人は城にぶつかって、コロネロが下敷になっていた。
しかし、もう一度飛ぼうにも箒が折れてしまっている。
目の前には高い城と重い門が立ちはだかっていた。



「これ、一応宣戦布告でいいの?」

「迎えが来たみたいだし、ちゃっちゃと返してきたらどうだ」

「…えー」

「えーじゃない」

「ホラ、入って来れなさそうだし?」

「アンタな…」



ツナとコロネロの前にある扉はそうそう開くものじゃない。
そう思い、綱吉は水晶を覗いていた、が。



「…うっそ」



それはいとも簡単に開かれた。
コロネロによって。



「だって、アレ5トンの鉄の扉…」

「そーいや一応モンスターだったな、アイツ」

「え、マジで!?」



何でそんなん仲間にしてんだお前!
知るか。アイツはツナに引っ付いてきた害虫だ。
はぁああ!?

そんな会話を交している大人達を無視し、スカルは水晶を見つめていた。
そこには、敵地に乗り込むというのに呑気に挨拶なんかしちゃっているツナが居た。

本当に、綱吉に似ている。
そしてその雰囲気をかもしだしているツナはスカルのタイプだったりなんかした。
というか、素直に綱吉に付いたのも、彼が気に入ったからだった。
チラチラ、と様子を伺い、スカルは術を使ってその場を離れる。



「レオンってリボーンがいつも肩に乗せてたヤツかコラ」

「そだよ。リボーンの相棒で、カメレオン」

「趣味わりーよな」

「でも可愛いよ?」

「あれがかコラ。テメーブルーベリー過剰摂取した方がいいぞ」



此方も他愛のない会話を繰り広げていたそのとき、ボワンと辺りを煙が包む。
そして晴れたその場所に、スカルが腕組をして佇んでいた。
ツナがどんなヤツか見に来たのだ。
暇だったから。



「どーも初めまして。この城の主である綱吉の弟子のスカルだ」

「綱吉?俺と同じ名前?」

「そうだ。因みに顔も激似だぞ」

「言った通りだろコラ」

「本当だ。コロネロ目いいね」

「だからテメーはブルーベリーを食えコラ」

「残念俺あんまブルーベリー好きくない」



コロネロが切れる直前、スカルは上手くツナの手前に割って入った。



「だったら俺が美味しいブルーベリーのケーキと紅茶を用意しよう。加工してあるから食べやすいだろう?」

「えっ、ケーキ!?食べたい!」

「オイコラツナ!!敵に釣られてどーすんだ」

「だって最近ケーキ食べてないんだもん」

「それくらい俺が買ってきてやるぜ」

「でもツナは今食べたいって言ってるだろう?」

「いきなりツナって呼び捨てすんな。あとタメ口って気にくわねーぞコラ」



ピシリ、と空気に電気が走った様な感覚を覚え、ツナは溜め息を吐いた。
コロネロにはもう少し人と仲良くなるということを覚えてほしい。
因みにツナにはナンパされているという自覚がまったくなかった。



「スカル…敵に惚れんなよ!!」

「顔はテメーの生き写しだけどな」

「あーもう何故!?」



綱吉がショックを受けている間にも、コロネロとスカルのバトルは白熱していく。
ふと水晶がコロネロの変化を捕えて、綱吉が感心した。



「あ!変身の術を使ってる…お前の弟子も中々やるな」

「いやだから、アイツはただの近所の悪ガキだぞ」

「やっぱ変なヤツの周りには集まってくるんだな。類は友を呼ぶ」

「それテメーも入ってるぞ」

「うっさいよ!」


キシャー!と叫び声をあげた綱吉に、リボーンはある意味感心した。
よくもまぁここまでひねくれて育ったものだ。
まぁそれに水や肥料を与えたのは他でもないリボーンであるが。



「つーかテメーの弟子やられてるぞ」

「えっ、嘘!?」



リボーンが指差した先、水晶が映したのは完全なるスカルの負けだった。
可哀想に、コロネロは遠慮というものを知らなかったのだ。
ツナもリボーンもコロネロと対等に付き合える異常体質だったので、今まで誰にも指摘されずに来たらこうなってしまったコロネロである。
そしてその被害者が今ここに誕生した。



「うぅっ…」

「はっ、俺に勝とうなんざ一兆年早いぜコラ!」

「一兆!?コロネロすげっ!ていうか大丈夫?スカル?くん」

「…スカルであってる」

「オイ、敵に情けは無用だコラ!」

「コラ!可哀想だろ、コロネロ。はい、スカル手」

「………」



さっ、と伸ばされた手にスカルは感動した。
何だこの優しさは?
今までこんな優しい人間がいただろうか。
否、居ない。
綱吉も優しいが、時々手がつけられなくなることがある。
スカルはときめきつつ、手を伸ばした――…



「…グッ!!」



瞬間、コロネロに手を踏み潰された。
ツナはびっくりして目を丸くしている。
スカルは悔し涙を流しながら歯を噛み締めた。
魔法使いにとって手は大切なのに…!



「くそっ…!!コロネロめっ…!!…ぐぅっ!!」

「先・輩!!!」

「ちょ、コロネロぉ!?」



何してんだお前は!!!
アワアワとツナはコロネロとスカルを交互に見て、とりあえずコロネロの足にタックルすることにした。



「おい、ツナ!?」

「イジメ、反対!!」



めっ!と叱られてコロネロはソッポを向いた。
仕方なくスカルの手の上から足を退けてやる。
スカルの手の甲に、綺麗な足形が付いていた。



「スカルも、コロネロを挑発しない!今回はコロネロが勝ったから、えーっと…先輩?呼びしてあげてね?」

「あと敬語だコラ」

「ごめんな、スカル。こんなんで」



先ほどより更に花を散らしたツナに、二人は何も言えなくなった。



「おい、そんなヤツ置いて先に進むぞコラ」

「ちょ、コロネロ…!!じゃ、またねスカル!」



可愛い。
綱吉も若かりし時はあんな感じだったのだろうか。
だったら何故あんな性格になったのか。
スカルは2人を見送りながら、溜め息を吐いた。



「あぁぁっ、スカルっ!可哀想にあの子あんま痛い目あった事ないのに…!」

「よくお前魔法誤って爆発起こしてたじゃねぇか。打たれ強いとは思うぞ」

「あれは事故。コロネロだっけ?えぇい、こうしちゃる!」



パチン、と綱吉が指を鳴らせば、コロネロが歩いていた所の床がすっぽりと抜けた。



「はぁぁああ!?」

「コロネロぉおお!えーと、えーと!落ちちゃ駄目だ!!」



バッとツナはとっさに両手を上げて、目をつむり祈った。
コロネロは犬に変身できても鳥にはなれない。
飛べないのだ。
パチリ、とツナが目を見開いた時コロネロが天井を突き破るのが見えた。
どうやら魔力が強すぎたらしい。
コントロールが下手なツナは今日も今日とて健在であった。
ツナはポカンと口を開けた。
しまった。
コロネロが先に行ってしまった。
最悪だ。



「コロネロ…!何だよーっ!置いてくなんてズルイ!」



他人のせいにするのをツナは常としている。
なぜならリボーンとの言い争いでいつも罪のなすりあいをしているから。
例によってコロネロに罪をなすりつけたツナは、半泣きになりながらもコロネロに追い付こうと足を進めることにした。



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