□チャチャぱろ!
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ボンゴレ山の小さな家。
其処に住むのは世界一の大魔法使いリボーンと、彼の相棒であるミドリの可愛いカメレオン。



「ツナ、この芽に綺麗な花を咲かせてみろ」



そしてリボーンが唯一引き取ったという、ツンツン頭がチャームポイントの見習い魔法使いの綱吉だ。
なぜ彼だけ引き取ったかというと、まぁリボーンなりの理由があるらしい。

綱吉を魔法使いにしたがったのは母親の奈々であったので、奈々は大いに喜んだ。
なんせ鈍くさく、何をやっても駄目なこの可愛い子が、大魔法使いに唯一選ばれたのだ。
しかも世界一を誇るリボーンに。
実際綱吉は魔法使いなどには興味なく、どちらかといえば勇者とかに憧れる平凡な男の子。
あまり乗り気ではなかった。



「んー…むむむむ、む!だぁああ!」



ボンッ!!!


リボーンの溜め息が、今日も大きく部屋に響いた。
最初は怒り、怒鳴り散らしていたリボーンであったが、今となってはもう慣れてしまったようだ。
寧ろ綱吉の超ド級の不思議能力に感心しつつある今日この頃。

リボーンが差し出した芽は、立派な大木に成長していた。
本当は綺麗な花になるハズだったのに、屋根を突き破る程の力強い木になってしまっている。


しかし、そんな光景を気にも止めない少年が居た。
タタタタ、と軽快な足取りで2人の居る家へと走っていく。
太陽の下、キラキラと金色の髪の毛が輝きナビいていた。


「ツナー!今日の修業は終わったか!?なら遊ぶぞコラ!!」


バシーンと馬鹿力で扉を開けた少年は、コロネロであった。
因みに彼の言う遊びとは若干暴力に近いソレである。



「テメーダメツナ何度言えば分かる!!!つーかいちいち家を破壊するな、いつになったら気が済むんだ!ふざけんな殺すぞ!」

「えー…だって出来ないもん仕方ないだろ」

「…殺す」

「むぎゃあああ!銃しまえ銃!魔法関係ねぇ!」

「うるせぇ魔法ばっか使ってると腕が鈍んだよ」

「お前魔法使いだろ!?」



これでも丸くなった方なのだ。
以前は綱吉を極寒の中外の木に吊しあげたりしていた。
因みに当日の綱吉は6才である。



「コラァ!!リボーン!!ツナをイジメたら許さねぇぞ!!」

「コロネロ?!」



パチパチと目を瞬かせている綱吉をしりめに、コロネロは華麗に変身をした。
因みにこのコロネロ。
月がなくても変身できちゃうオオカミ人間である。



「可愛いー!」



コロネロのコンプレックスは綱吉の反応であった。
可愛いって何だ。
せめてかっこいいと言って欲しい。
ただ、綱吉に抱きつかれるという美味しい条件がついてくるのでまぁ嫌いではない。
しかしコロネロはヘタレだった。



「こここコラ!!離せツナ!!この陰険魔術師に噛みついてやる!!」



その発言にピシリと神経を刺激されたのはリボーンだ。
リボーンが嫌いなものの一つに【格下が自分の悪口を言うこと】がある。
多分今回は陰険魔術師が引っ掛かったらしい。



「おい、馬鹿犬。俺様に向かってそんな口のきき方すると…分かってるよな?」



美しい笑顔をコロネロに向けたリボーンに、綱吉は自分の血の気が引いていくのを感じた。
昔から、この2人は折りが合わない。
しかもコロネロがリボーンと喧嘩をすると、必ず綱吉もとばっちりを食らう。
コロネロが綱吉を守ろうと頑張ってくれた上でのこの仕打なのでどうにも出来ない綱吉だった。



「…くそッ」



結局本日もリボーンの勝利で幕を閉じた。
完全なる圧勝である。
コロネロは悔しそうに舌打をした。
気に入らない相手に、縄でくくられ木に吊されたのだ。
これほど屈辱的なことはない。
否、お決まりなパターンと化しているのだけれど。



「おいダメツナ、今日最後の課題だ。この駄犬を魔法で下ろしたら遊んでもいいぞ」

「はーい」



素直にいい返事をした綱吉は、リボーンが家に入るのを見届けてからコロネロに向き直った。



「大丈夫だぞ、コロネロ!すぐ下ろしてやるからなー」



エッヘン、と胸を張って綱吉は魔法を使ってハサミを出した。
それに顔を青くしたのはコロネロだ。
はっきり言って、綱吉の魔法は驚異的である。
つーかヤバい。



「うぉ!!あぶねーぞコラ!!」



現に今、コロネロの横を斤が通り過ぎた。
間一髪、コロネロが避けていなければ大変なことになっていただろう。
主にコロネロが。



「コロネロ動いちゃ駄目!!!」

「やめろツナ!!!俺を殺す気かコラ!!」

「落ちついて!」

「お前が落ち着け馬鹿野郎!!!」



コロネロと綱吉が外でワイワイキャイキャイしている間、リボーンは優雅にエスプレッソを用意していた。
魔法で用意するのは容易いが、それでは何だか味気ない。
やはり料理というのは手作りが一番というものだろう。



「ったく、あの馬鹿共よく飽きねぇな。馬鹿だからか?」



席につき、エスプレッソに口を付ける前、リボーンは異変に気付いた。
さっきまでいたカメレオンのレオンが居ない。



「レオンならここだ、リボーン!お前の大切な相棒は俺が預かっている」



ふははは!と何処からか愉快そうな笑い声が降ってきたかと思えば、ボワンと辺りは煙に包まれた。
そこに居たのは、綱吉に良く似たー…



「つっくん!」

「気持ち悪い呼び方で呼ぶな!俺は綱吉だ!」

「残念だがな。俺の下僕も綱吉なんだ」

「お前が狙ってやったんだろー!!」



隣の山に住む魔法使いの綱吉であった。
ややこしいが、弟子の綱吉とは違う。
(本当にややこしいので、これからは弟子の方の綱吉をツナと表記する)
彼はリボーンの幼馴染みで、リボーン曰く恋人で、本人曰く宿敵だ。
しかし姿形、身長と声質が違うだけで、弟子のツナと全く同じだった。
それがリボーンがツナを選んだ所以である。
初恋の相手の綱吉は、リボーンを好いてはいなかった。



「綱吉、テメーも飽きねぇな。そろそろ俺のモンになっちまえよ」

「煩い黙れ動くな。これが目に入らぬか!」

「レオンだろ」

「ちょ、軽くない?!」



まぁいい!
そう綱吉はヤケになったように吐きすてて、リボーンを紐でくくった。
そしてそのまま箒に乗せると、窓を割って出ていく。



「随分と積極的だな」

「ふん、呑気でいられるのも今の内。これで大魔法使いリボーンも終わりだ!」



あははは!と更に楽しそうに笑って綱吉は自分の山へと帰っていった。
しかし残念ながら綱吉は、リボーンの気分も上々だと言うことには気付いていない。
リボーンがおとなしく捕まってくれたという事実が、綱吉を浮かれさせていた。


一方、もう一人のツナはそれを見て大慌てだった。



「ぎゃー!!リボーン!?今のアレリボーンじゃない!?うっわ連れてかれてるー!!」

「そんなヤツ要らないって言っても受け取らないぞコラー」

「…コロネロ?」



ジャキーンと剣を出してツナはコロネロに一発ふりかざした。
なんやかんや言っても、リボーンは大切なツナの師匠なのだ。
笑えない悪口はいくらコロネロでも許さない。
自分が言う分にはいいけど。



「き、きっとあれは隣の山の魔法使いだ。ずるくて意地悪でいつもリボーンのこと妬んでるって言ってた。まぁ所詮リボーンの自業自得だろうけど」

「つーかなんかツナに似てる気がしなくもなかったぜコラ」

「あ、コロネロ縄とけたんだ」

「自分でといたんだコラ!」

「ふぎゃっ!」



コロネロはツナを一発殴り、空を見上げた。
確かに、あの魔法使いはツナに似ていたのだ。



「どうしてリボーンがそんなヤツに負けたかは知らないけど」



呟かれた声につられてツナを見れば、随分と不機嫌だった。
実は今晩の夕飯がツナの大好きなカルボナーラだったりするのでキレていたりするのだが、そんな事は知らないコロネロである。
リボーンがそんなに大切か、と地味にショックを受けていた。



「俺、リボーン助けに行かないと!」



手を握り締め強く頷いたツナ。
コロネロはそれをやんわり止めた。



「テメーまだ見習い魔法使いだろコラ。敵うわけねー。危ない事は止めとけ」



グイっとツナの握り締められた手を取り、優しくほどけば、ツナがクスリと笑うのが分かる。
コロネロの青く澄んだ瞳が不機嫌から少し濁った。



「大丈夫だよ、コロネロ。だって俺、一応世界一の魔法使いリボーンの弟子だもん!何とかなるって!頑張るからさ?」



ねっ!と花散らしスマイルをコロネロに決め込んだツナは爽やかに笑っている。
実のところ、コロネロはこれに敵わないのだ。
ぐぅ、だの唸った後、コロネロは溜め息をついた。



「…仕方ねーな。手伝ってやるぜコラ」

「わーっ!そうこなくっちゃ!やっぱコロネロはいい子だなぁ」

「言っとくが、アイツの為じゃねーぞコラ!!」

「はいはい」



他でもないツナの為なのだが、ツナは全然気にしていないようである。
コロネロは大きく溜め息を吐いた。



「じゃ、リボーンを助けにいくぞー!」



一人気合いの入ったツナは、コロネロの手を取りズカズカと森を進んで行った。
コロネロが顔を赤くしていることも知らずに。

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