パロデイ

□どうしよう!
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どうしよう。
あー…どうしよう。
ありえない。
あっちゃいけない。
良く思い出せ、俺。
一体俺の身に何が起こった。


「大丈夫ですかっ!?十代目!!」

「うん大丈夫俺ちょいと私室に篭るね良いっていうまで入ってきちゃ駄目だよ絶対に!!」


ツカツカと早足で廊下を突き進む。
気分は最悪。
先程までは身体的にヤバかったのだが、今は精神的にヤバい。
「どうしよう」という言葉の渦がぐーるぐーると脳内を土足でドッタンバッタン走り回っている。
獄寺くんなんかに構ってる余裕なんてない。


乱暴に私室の扉を開けて、内側から鍵を閉めた。
リボーンが帰って来るのは遅くて一週間…早くて4日ってところか。
良かった。パナマに飛ばしといて。


「う゛ーっ」


ベッドにとびこみ、掛け布団を上から被る。
シャマルの口封じには成功した。
多分、大量の同情でもって。


「妊娠って…有り得ねぇ」


あのあとシャマルに聞いたら、もう2ヶ月は過ぎていたらしい。
順調に行けば、これから腹も膨らむとか。
こりゃ誤魔化しきれん。
流石にメタボとか無理あるだろう。


「どうしよぉおお」


早め早めの内に、どうにかしなければ。
下ろすという選択肢は初めからない。
無駄な殺生はしたくないし、何より彼との子供だ。
授かったからには産んでやろうと思う。

だが、いつ、どのタイミングで言おうか。
というか、彼は喜んでくれるのか?
…分からない。


綱吉は大いに混乱していた。
初めての妊娠だからだとか、それ以前の問題で。
セックスは、多分人並み。男同士だし、避妊は一切していない。


その時ふと、『授かる』という言葉が脳に引っ掛かる。
そのままゆっくり糸をたぐりよせていけば、ある答えにブチ当たった。


「…まさか、」


まさか、アレだろうか。
12月25日、日付が変わって間もない時間、2人きり、廃墟の教会にて。
単語と記憶が一斉に沸き上がってくる。


『ねぇ、スカル』

『もし神様が俺たちに子供を授けてくれる事があったら』

『絶対に素敵な家庭、作ろうね』


ふざけ半分、本気半分で言ったその言葉。
彼は困った様に笑っていた。

そうだ、困った様に…

もし、あの時の教会で祈った未来を神様が聞き届けて願いを叶えてくれているとしても、彼は…。


「ウープス…!」


駄目だ。
考えれば考えるほど気分が暗くなっていく。
男が孕む薬なんて存在しないし、もしそれが存在してるとしても彼が綱吉に使う意味も無ければ理由もない。
それにお茶を入れたり食事を用意するのは綱吉の役目と化していた。
綱吉に薬を飲ませるのにはかなりの困難を極める。

なので、つまりはアレだ。


「…神様って、マジでいんだな」


その一言に尽きる。


きっと綱吉が孕んだという事実が知れ渡れば、守護者各位が大いに荒れる。
ほんで、多分内乱みたいのが起こる。
皆話しても理解してくれなさそうだし、何より彼を殺しかねない。
主に俺の家庭教師兼彼の先輩であるあの死神とかが無駄にきばりそうだ。
あとその同胞達。


「うぅっ…」


どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!!


こう言うときはやっぱり人生の先輩である母親に電話をすべきか!?
いや待てそしたら全てが父さんに伝わる。
それだけはマジでご勘弁願いたい。

うーわっ…

なんちゅうことしてくれたんだ神様!

確に、欲しかった。

欲しかったけど…


はぁ、と綱吉は大きな溜め息を吐いた。

自分の自信の無さに嫌気がさす。
彼の感情を中々面に出さない性格を恨むのも今更だ。

なんていったって、その無愛想を愛しているのは他でもない自分なのである。
彼がそんな事に走ることは多分無いと思われるが、綱吉が手放せば色んな女が寄ってくるのは確実。
イイ男がフリーという条件は、女の人に火をつける。

まぁ、手放すなんてそれこそ有り得ないんだけど。


「おじゃましまぁーす」

「ってえぇぇぇえ!?」


鍵を掛けていた扉がナチュラルに開かれた。
何故!?


「あらぁ、入っちゃ駄目だったかしら?」

「い、いや、駄目も何も鍵!掛ってませんでした?」


ひょっこり顔を覗かせたのはヴァリアーの紅一点であるルッスーリアその人だった。

にっこり笑うその人に、綱吉はヒクリと固まった。


あぁ…
どうしよう。


今人と向き合える程精神的に余裕が無い。
というか、しょっぱなからこのオカマとか。
難易度高すぎじゃなかろうか。


あー本当
マジで色々どうしよう…


.

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