生意気な子供達

□Facciamo una pausa.
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こちら花の都フィレンツェ。
今日も至って平和です。



フィレンツェといえば、ルネサンス繁栄のルーツになった街。
そこを納めていた貴族であるメディチ家はパトロンであったのだ。
だからだろう。
街は芸術で溢れていた。



「うーん、いいねぇ」



裏通りのアパルトマン。
大きな川を望める一室にて、綱吉は溜め息を吐いた。



「やっぱり気分転換は必要だと思う」



うんうん、と頷いた後で綱吉は大いに叩かれた。



「いでっ!」

「何を呑気な事言ってるんだ。何故アンタがここにいる」

「酷いスカル…ていうか合鍵くれたのお前じゃん!」

「こんなに毎度毎度足を運ばれるとは思わなかったんだ!!」

「なんだよ策士家の癖にー」

「アンタは異常で測定不能だからな。論外だ」

「…それ仮にも恋人に言う言葉かよ」



ぶすぅ!と膨れる綱吉に、スカルは大きく溜め息をつく。
確に合鍵を渡したのは己だ。
己であるが。
こうも頻繁に来られては正直困る。



「大丈夫だってスカル!仕事はちゃーんと終わらせて来たから!」



まぁ確に仕事の面でもそうだ。
綱吉には逃亡癖がある。
その逃げ場として遣われては、本末転倒だろう。



「今日のパンは何?」



スカルの持っていた紙袋にめざとく目をつけて、綱吉はフンフンと鼻を動かす。
まるで小動物だ。
未だにスカル自身も何故こんな男に惚れたのか理解に苦しむ時がある。



「アンタ今日俺がここに来なかったらどうしてたんだ?」



住まいといっても、仮の家。
居ることの方が少ないこの家は、ただ休息の場として遣われるテリトリーだ。



「え?スカル居ないのに来るわけないじゃん」

「超直感か?」

「うん」

「こんなところで使ってくれるな!」

「うぎゃっ!!」



スカルからチョップを喰らった後で、綱吉はおとなしくなった。



「だって俺、あまり屋敷から出させて貰えないんだもんなー。やっぱあんな場所より、アパルトマンや街に住みたいよ」



ちょっと落ち込んだ綱吉に、スカルはヤレヤレと首を振る。
そうして頭を撫でてやれば、密色の瞳と目が合った。



「スカル」

「何だ」

「オーストリア行きたい」

「そうか」

「フランスも行きたい」

「…で?」

「ドイツも、ベルギーも、スペインも行きたい」



行けばいいじゃないか、勝手に。
とは言えない。
彼の瞳は本気だ。
本気でスカルに甘えにかかっている。
この瞳に、スカルは正直言って勝てる気がしない。
結局は惚れた弱味なのだ。



「で、休みは何日取ってあるんだ」

「2週間!」

「んなっ?!にしゅ…!?」

「ん。ガラにもなく頑張ってみたんだ(主に守護者を丸め込む方向性で)」



カッコ内を読み取ったスカルは、そんなんでいいのかボンゴレ。
そんなボンゴレに何故勝てないんだカルカッサ。
と呆れたが、まぁ休みは長い方がいい。
スカルも長期休暇がようやく取れたところだった。
敢えて偶然とは言わないでおこう。



「本当にアンタって人は…」



でも敵わない。
そんな自分も大概アホだとスカルは痛感しているわけで。



「仕方ないな。メシ食べたら用意しとけよ」

「了解!」



それも慣れたことなので、彼の笑顔に免じていつも許してしまうのだ。


要は、

Faccaiamo una pausa.

ってことで。



*fin*

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