生意気な子供達

□Oh ,my suger !
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サラサラと流れるように降る雪は、優しく無音を撒き散らす。


「あーあーあーあー…」
そんな中で、ボンゴレの本邸は今日も賑やかだ。主に簡易に足を踏み入れることの出来ない、主人の部屋が。
虹の子供たち。本日のメインはスカル、コロネロ、リボーンである。この子たちは、前菜を出すことなくメインに突っ走るのがいけない。少々痛む頭を押さえて、主人である綱吉は、目の前の惨状を受け入れる為、もう一度顔をあげた。


珍しくライダースーツじゃないスカルは、半泣き状態でいじけている。少し乱れた淡い紫色の開襟のシャツは、綱吉が以前彼に似合うからと買ってあげたもの。綱吉は、着てくれたんだ、という嬉しさと、あんなに乱しちゃって、という複雑な心境になりながらも、スカルに手を伸ばし、立たせてあげた。
「大丈夫?あ、ここ擦れてる。あとで消毒してあげるからな」
よしよし、と頭を撫でれば、ぎゅうと足に抱きついてくれるのが可愛い。全く素直じゃない子供ではあるが、甘えてくれるだけ救いがあるのだ。

さて…奥で喧嘩をしている2人。リボーンとコロネロ。まぁ彼等は壮大に自由で素直だが、一昔前に日本で流行した言葉「ツンデレ」であることは確かだ。いや、あれらにはデレがない。ツンだ。ツンツンだ。
綱吉はふぅ、と溜め息をついて、よいしょ、とスカルを抱っこしてやった。いつもは此方から触れば「何をするんだ離せ!」と暴れだすものの、今は特別静かだ。綱吉もそれを知っていて抱き締めてやるのだ。あとは自分から来るのを待っているに限る。

音のする方向からして、2人が騒いでいるのはどうやらキッチン。全く料理に無頓着で知識に間しては皆無な奴らだ。迷彩柄のバンダナの子は特に。黒い帽子の子も、喉が渇いたのなら使用人や部下にでも用意させるだろう。自ら用意するなんて事はありえない。

味覚的にリボーンは肥えた舌を持っているので、まだキッチンと言っても違和感はない。しかしコロネロに至っては味覚の方も正直期待できたもんじゃない。今までの生活からして食べられればOKとかもうそういう領域なのだ彼は。
というかそもそも。
どうして今このタイミングでキッチンなのだろうか。「あぁ…なんでこんなことに…」
綱吉は意を決してキッチンに足を踏み入れるため、嫌々と駄々をこねている足を無理矢理動かすことにした。
どういうことだ。俺は律儀に仕事をこなし、会合に参加して、守護者達の求愛をかわしながらようやく誰にも縛られることない自室にたどり着いただけなのに。綱吉は更にガンガンしだした頭をふるふると振った。いや、やめよう。これ以上考えても意味がない。いや、むしろ悪いことしか浮かばない。
「ツナ」
「ん?なーに」
「…先輩達止めるの、後にした方がいいんじゃないか?」
すん、と鼻をすすってスカルは言った。それに対して綱吉は、んー?と首を横に傾げて、それから苦笑いをしながら首を横に振った。
「今止めなきゃ更に酷くなるだろ?それに、止められるの俺くらいしか居ないしね」
「……そうか。じゃあ下ろせ」
「はいはい」
スカルを地面に下ろすと、スカルは後ろからついてきた。綱吉に抱っこされている所を見られたら、中々に厄介なのである。それを両者自覚しているため、少し離れる体温に寂しさを感じるだけで、駄々をこねることは無い。



「うひゃー」
キッチンはそりゃあもう酷い事になっていた。花瓶は倒れ、割られて、中の花々が飛び散っていた。あれは獄寺が綱吉に見当うと、珍しく彼が親しくしている花屋(どうやら話が合うらしい)に見繕わせたものだ。
あぁ、両者に謝らなければならない。今度チョコレイトでも持って行こう。綱吉はそう心に決めた。
あとは、在るべき場所に在るべき物が無い事だけだろうか。壁に出来た弾後は見なかった事にして。

「おい!お前達何してん…だ、よ…」
言ってから綱吉は目を丸めた。それもそうだ。何せ二人は迷彩服、黒衣を脱ぎ捨て、スカルと同じ様に、淡いブルーと淡いイエローの開襟シャツに身を包んでいるではないか。しかもそれだけではない。
「ななななななっ!何をしてんの!?」
なんと2人は可愛らしいエプロンをつけているではないか。これは一体どういうことだ!?綱吉は自分の対応力のなさを恨んだ。普段ならここで、『お前らもう10歳なんだし、我慢ぐらい覚えろよな!』と叫ぶ筈であったのだが、今は言葉すらでない哀れな口は、パクパクと求酸行為を続けていた。
「みりゃあ分かるじゃねぇかダメツナ。俺は今料理中だ。料理するにはエプロンは必要不可欠だろうが」
「そうだぜコラ!」
いや、それは妥当な答えだ。妥当な答えだけども。
「スカルー…」
「…瞳をうるませてこっちを見るな。…つまり、アレだ。バレンタインの延長だそうだ」
「はぁ?」
バレンタイン!?綱吉は声を荒げた。何故ならバレンタインはもう先日過ぎていた。しかもコイツらは嫌というほどチョコを抱えこんでいたはずだ。
「てか甘い匂いよりも…焦臭い匂いが…」
「…チョコはビターがうまいんだぜ、コラ」
「いや、おもいっきり視線外されて納得なんて出来ませんけど」
「まぁグチグチ言うなツナ。男が廃るぞ」
「そりゃ俺だってここまでキッチン汚されてなきゃ怒んないよ!」
壁に飛び散ってたチョコが目に痛い。だから止めたんだ、俺は。そうスカルが目で訴えていた。
あぁ。
だからあんな所でぐずってたんだなぁ。綱吉は勝手にそう解釈して頷いた。スカルが常識人(もっとも、基準は虹の子供達の間だけではあるが)なのは、綱吉が一番知っている事実。そして自分が居ない時は、この立派な策略家で現役軍指管の彼が2人の暴走に自分の代わりに止めに入っているということも綱吉は熟知していた。

まぁ、つまりは『いつものパターン』により彼は、今日も今日とて返り討ちにあっていたと言うわけだ。
相手が悪いんだよなー、と綱吉は若干同情していた。
「大体、お前ら何で手作りなんだよ?」
「ハルと京子が言ってたぜコラ!本当に好きな奴には、手作りチョコが一番喜ばれるんだって」
「んー…まぁな?そりゃ間違っちゃいないけど。お前ら誰にチョコやんだよ?コロネロはラルにか?そんなんやったら多分殴られるぞ?」
綱吉は汚れた皿をかたしながら、2人に問掛ける。因みに、ジャージャー蛇口からお湯を出すことに専念しているので、2人が苦汁を飲んだ様な表情をしていることには気付かない。
「何で俺がラルにやらなきゃなんねぇんだコラ」
「え?だってお前ら付き合ってんじゃないのかよ?」
「はぁ!?それ誰情報だコラ!!」
「誰、って…リボーンだけど?あとスカルも知ってたし、マーモンも知ってたから俺はてっきり公表してんのかと…。あぁ、大丈夫だよ?誰にも言わないから」
スカルとバイパーに確認してる時点で言ってんじゃねぇかコラ!!コロネロは若干ムカつき過ぎて泣きたくなりながらも、隣にいる悪の根源を睨んだ。リボーンは気にせず口笛を吹いている。スカルはスカルで自分は関係ないとばかりに綱吉の片付けを手伝っていた。
「ふざけんな!俺はラルと付き合っちゃいないぜコラ!!」
「え…そーなの!?」

綱吉は顔をあげ、コロネロを見た。コロネロは顔を真っ赤にして涙目だ。



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