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□妄想
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例えば、この場に貴方が居たらどうなるんだろうか。
こうやって、俺が貴方の事を思って、写真みたり、携帯の履歴や、前交したメールを眺めていたり。
そんな光景をまのあたりにしたら、貴方はどうするのだろうか。
この、じれったくも儚い俺の気持に、気付いてくれるのだろうか。
ただ単に、慕ってるだけじゃないって。
貴方は、気付いてくれるのだろうか。
***
「綺麗な…夕日ですね」
「そーだねぇ」
カセンジキ。
夕日が目に染みる。
オレンジ。
オレンジすぎるくらい、オレンジ。
あと、数センチ。
あと、少しの勇気。
それだけで、手が触れ合える。
だけど、やっぱりそれは。妄想の中の俺の行動でしかなく。
実際の俺は、夕日を眺める貴方の横顔にみとれることしか出来ない。
「本当に綺麗だなぁ…」
ふと、微笑んで呟く貴方。
それは、まれに。
ごくまれに。
自虐的に見える。
ほら、今だって。
抱き締めたい衝動に駆られてる。
じっと見てたら、
目が合った。
「ん??」
「いや…あの。綺麗ですね!夕日…」
夕日も綺麗だけど…
貴方の方が魅力的。
だなんて…
言えない。
鈍感すぎる貴方が気付くはずもなく、
その微妙な空気は
風に流された。
そのあと意味もなく、二人で笑う。
「じゃ、戻ろっか!」
「はいっ」
妄想は、妄想で楽しいけれど。
現実は、現実で楽しいのかもしれない。
「獄寺の手、あったかい〜!」
「十代目の手は、冷たいですね」
「あはは、まぁね〜」
この手の感触は。
現実だけの特権だしな。
*FIN*
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