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□ただ、それだけ。1
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「ミク?…あぁ、レンー」
幸せそうに笑うミク姉の後ろからは……カイト兄。
ミク姉の白くて小さな手を優しく、握っている。
優しい、カイト兄。
「…久しぶり」
2年前、ミク姉とカイト兄が出ていった理由はなんだったっけ?
確か、ミク姉とカイト兄に海外へスカウトが来たんだっけ。
また一段と大人びた2人は手を下ろして、玄関へと向かった。
俺も窓を閉めて、一階へ降りた。
(…きっと2人は…)
本当は、最初からそんな気がしていた。
カイト兄が、家に来た時のミク姉の顔は今でも思い出したくない。
勇気を出して「好きだ」と言えば「私もだよ〜」なんて全然本気にしてくれない。
そう、ミク姉からしたらまだ俺はガキ。
でも、でも…今は?
少しは俺、大人になったろ?
そんな事聞いても、ミク姉はカイト兄しか大人に見えないのだろう。
苦しい。
2年間、まだかまだかと待ち望んだミク姉にせっかく会えたのに、苦しい。
カイト兄が…憎い。
もし、もし、ミク姉と海外へ行っていたのが俺だったら、その手をつかんでたのは俺だった?
リンじゃだめなんだ、ルカ姉じゃだめなんだ。
グミさんも、ハクさんも、ネルさんでもない。
ミク姉が愛しい。
「…おかえり、ミク姉」