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□ただ、それだけ。1
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―俺は16になった。
ミク姉がこの家を出て、2年がたった。
3年後に帰ってくるね、って言ってからやっと2年がたった。
ミク姉は18になった。
あの時より身長が高くなった。
だけどミク姉がまたでかくなっていたらどうしよう、なんて毎日の日課のように頭の中で呟きながら窓の縁に手をかける。
「…っみ、ミク…ミク姉…?」
なにげなく顔を覗かせると、彼女によく似た髪が見えた。
スキップをしながら家に向かってくる――ミク姉。
帰ってきた?
なんで?
そんな疑問が頭を巡ったが、どうでもよかった。
久しぶりに見る彼女は淡いピンク色のシフォンワンピースを風に靡かせながら、相変わらずの可愛い過ぎる笑顔をしていた。
「あ」
二階の窓からジッと見ていた俺に気付いたのか、ふいにミク姉が顔をあげた。
二秒間、絡み合う視線に俺の心臓はせわしなく動いていた。
「レンくん!」
顔をパッと明るくさせてその場で跳び跳ねて手を振るミク姉に、平然を装いながら微笑んで手を振り返す。
―でも俺は気づいてしまった。