Crystal†roaD
□第T噺†旅人の街アサノワ
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火の海だった。
家も
人も
草も
空も
僕も
みんな 赤く動いている。
―…母さん?
―…父さん?
誰の声も聞こえやしない。
聞こえたとしたらそれは
明るい返事じゃなく
最期の断末魔……。
―……兄さん……。
あんたがやったんだろ?
違うなんて言わせない。
誤解なんて言わせない。
あんたがやったんだろっ?! 答えろよ…っ!!
飛びつく僕。
煙と涙のしみた青い瞳に映った兄。
そこにはいつもの優しい瞳はない…。
血と炎が染み込んだ赤い瞳が
僕を真っ直ぐに見据えた…―。
刃が僕の右目を切り裂いた。
最後に右目が映したのは
兄さんの涙だった。