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□SH5TM
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がらん、とした寝室で、


「ヌナのパボヤァーッ!!」


僕の声が空しく反響する。
ヌナのマクラを壁へ投げて八つ当たりしたのはこれで何回目だろう....、





  " SH5TM "

それが僕のメーカー名

キュートなボディデザインと、内蔵されているポップミュージックが売りのヨジャに人気な携帯。
主なターゲットは中高生だったけど、僕の持ち主は大学4年生のお姉さん。


と、言っても、ヌナは可愛い。

ホント!僕とそう変わらないんじゃないかっていつも思っちゃう。


.....あ、今!ノロケだとか思ったでしょ!


違うんだなぁ〜、これが!
まぁ、見てみればわかるよ。




で、


その可愛い可愛い僕のヌナはと言うと....、






「う"ぅ....!ヌナァ〜!!」


僕を置いてきぼりに、
つまり、
携帯を携帯しないでお出かけ中....、

そう。

僕の可愛い可愛い可愛いヌナは、よく僕を充電したまま家に忘れていく。

"可愛い"
イコール"子供っぽい"
イコール"おっちょこちょい"

という、方程式だ。
(だから、中高生向けでも違和感がない。)

今日でその回数は買ってから二桁目を更新。.....ヌナが大好きなさすがの僕でも、今回ばかりは許せないかも。


視界が歪んできて、きゅっと口を結ぶ。



泣くもんか....!


今日こそはヌナに言ってやるんだ!

『携帯しないなら、もう使わないで!』
って。

いつまでたってもヌナが僕を忘れていくなら、いっそ使ってくれなくていい。だって、これじゃあ宅電の子機と同じじゃないか。


はぁぁぁぁ......、

そう考えたら、
もっと泣きたくなってきた....、


「.....ヌナ、の、パボォ...、」


体育座りのまま、顔を足に埋める。





がちゃがちゃがちゃ.....、




「.....あ、」

これは、




ばたんっ!!




どたどたどたどたっ!

がたっ!




「テミナッ!!!」


「ヌナ....、」


ずっと待ってた可愛い声


「ご、ごめんなさいっ!私、もう、忘れない、って、約束したのに.....!!」


「(......ああ、もぉ....、)」

そんな顔で謝られたら、怒れない。


「テミ、ごめ...っ!」

ぜぇぜぇ、息がまだ整ってない。
走って帰ってきたの?

時計を見れば、まだお昼過ぎ

あれ....?
そういえば、まだチングとショッピングのはず。昨日メールしたから間違いない。


「ごめん!ごめんなさい!!」


........もしかして、僕のために?



「も、もう、忘れないから....!!」



早く、帰ってきたの?





「........ああぁっ!もぉーっ!!」

「テ、テミナ!ごめんっ!!」


怒れない!

また怒れなくなった....!!




「ヌナ!戻るよっ!!」

「えっ!?」


ヌナの手を掴んで走り出す。


「まだ時間あるでしょっ!」

「え?え??」


「せっかくお休みなんだから、ショッピング行かなきゃ!!」



携帯は持ち主を選べないけど、僕はヌナに選んでもらってよかったと思う。

......もう置いてきぼりにしないでね?




"SH5TM"




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第3段はテミン携帯。

可愛い携帯って反応が多かったです。
ヌナ設定なのは私がヌナだからというだけなんですが...、ハマり役でしたね(笑)


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