前の夢

□ラブレターは破られた
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(こ、これは…!?)
下駄箱の前で僕は変な汗を額にかいていた。
ありえない。
ピンク色の封筒に、赤いハートマークのシール。
宛名には“白鬼院凜々蝶様へ”と書かれていた。
こんなベタベタな手紙はテレビやマンガでしか見たことがない。
(これはまさか…、ラブレターというやつか!?)
いや、ありえない。
もしそうだとすると、手紙の主はなにか勘違いをしているのだろう。
だって、僕は友人関係だってままならずにいるのだ。
人付き合いを頑張ろうと、変わろと思っているが、まだまだ発展途上で、かろうじて学校で髏々宮さんと渡狸くんと一緒に昼食を取るくらいだった。
(そんな僕がラブレターなんて…。っていうか…)
こんな物をもし彼に、御狐神くんに見られでもしたら…。
「考えただけで恐ろしい…。」
妄想の中で爽やかに笑う腹黒い御狐神くんの姿が見える。
きっと、この手紙の主は無事では済まないだろう。
もちろん僕もどんな目に合わされるか分かったもんじゃない。
(あれ?恋人は恋人だけど、確か彼は僕のSSじゃなかったか?)
そんな彼に身の危険を感じるというのはなにか違う気がする。
「それより、どうしたものか…。」
僕には御狐神くんがいるから、もし本当にこれがラブレターだとすると差出人の気持ちに添うことは出来ない。
かと言って読まずに捨てると言うのは悪い気がして、気が引ける。
「う〜ん…」
「なにかお悩み事ですか、凜々蝶さま。」
「うん…って、御狐神くん!!??」
急に背後から声をかけられ、僕は反射的に手紙を鞄に入れてしまった。
「なっ、なんでココに!?」
「凜々蝶さまのお帰りがいつもより5分と28秒程遅かったようでしたので心配で心配で…」
「君の体内には目覚まし時計でも備わっているのか?まぁいい。遅くなってすまなかったな。帰るとするか。」
「でも凜々蝶さま、なにかお悩み事が…」
「なんでもない。些事だ。」
そうキッパリ言い切ると、僕は先頭を切って歩き出した。
実は、内心ヒヤヒヤしている。
鞄の中にしまってしまった手紙をどうしようかと。
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