☆ 妖狐×僕SS

□緊急!どきどき!?バレンタインチョコ大作戦!
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「こんばんは。御夕食の時間です。」
『う、うん。』
「昨日揚げ物でしたので、本日はさばの味噌煮をメインディッシュに...失礼します。」


双熾くんは急にあたしの前髪をかきあげて大きな手のひらをおでこに当てた。
思わずひぃっ、と小さな声が出る。


「熱ではないようですが…。先ほどから動きがぎこちなく、顔が真っ赤なご様子でしたので…。大丈夫ですか?」
『ん、問題ない!さー!味噌煮食べに行くぞー!』
「はい。」


うっわ、最初からこんな調子じゃ無理だよー!
というか、予定だと今渡すつもりでいたのにー!
こんな箱持ってご飯食べに行ったら違和感満載…というより、チョコの存在がバレる!
あたしはエレベーター待ちの数秒間、彼をちらりと見た。
彼に変わった様子はない。
…よし、今だ、いけ!あたし!



チーン・・



……なんというナイスタイミング…。
双熾くんを呼ぼうとしたその瞬間にエレベーターが到着し、目の前のドアが無音で開いた。
……こんのポンコツエレベーター!
こんなアホっぽい状況で渡せるか!
もう本当面倒だな!
この中で渡そう。


『双熾くん!』
「はい。」
『今日はバレンタインデーだけど、別の女の人から何かもらった?』


あたしはさりげなくチョコが死角になるように袋を身体の後ろに回す。


「別の女の人といいますと?」
『いや、その、あたし以外の…っていうか…。』
「いえ、今日はここにこもりきりでしたから。」
『えっ、でもでも妖館に来た人とかもいるんじゃ…。』
「はい、何人か来ましたが、お断りしました。」
『えっ!?なんで!?』


一瞬、喜びで胸が高鳴る。
しかし、普段紳士な彼がそこまでしたと思うと、その断られた人たちは一体今頃どれほどのダメージを受けているのだろう、という同情の感情も湧きあがる。


「今僕が彼女達の想いを受け取ってしまったところで、僕は彼女達の想いに報いることはできません。
それならば最初から、思わせぶりなどさせないように、と。」
『そっ…か。』


少し喋ったすぐ後にエレベーターは目的の階へとたどり着き、また無音で扉が開く。


…もう駄目だ。少し歩いて行った先の大きな扉を開けてしまえば、このチョコは人にさらされて渡せるどころの状況じゃなくなる。
ここで、ここで渡さなくちゃ!


あたしは深く息を吸ってエレベーターの扉が閉まったと同時に、一歩前にいる彼を呼んだ。






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