☆ 妖狐×僕SS

□携帯
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翌日。


いつものように、彼が用意してくれた朝食を食べてマンションを後にする。
車から降りるなり、いつもと変わらない厚いお出迎えの言葉をもらってやっと教室へと辿り着く。
新しい携帯を始めて学校に持ち込んだせいか、なんだか落ち着かない。
席に座って特にすることもないので、なんとなく携帯を開いてみる。
と、そこには新着メールを知らせるマークがついている。
そういえば、この携帯になって、これが初のメールか...。
そんなことをぼやきつつ、あたしはメールボックスを開く。

[from:御狐神 双熾]


双熾くんか。
きっと初めてのメールだからだろう…。
胸をドキドキさせながらメールを開く。


[本文:今日は天気がよろしいですね。花様のお心も、この空のようになりますことを祈っております。]


…Twi●terか。
これってメールというより、呟きでしょ!
しかもあたしが学校に着いてすぐに送られてるし...。
まぁ、いいや。
先生も教室に入って来たので、あたしは特に返信することなく携帯を閉まった。



昼休み。


いつも通りカルタちゃんと渡狸で重箱弁当を囲む。
ふと、携帯が気になり、またポケットから携帯を取り出す。
すると、案の定メール着信を知らせるランプが点滅している。


「食事中に携帯かよ。」とぼやく渡狸に、君もたまにやってるよ。と小学生の喧嘩一歩手前の返答をしつつ、メール内容を確認する。


[from:御狐神 双熾]


ん、またか。


[本文:授業の方はどうでしょうか。本日は体育の授業があると聞いております。どうかお怪我のありませんように...。]


...知っての通り、メールは神様に祈りを捧げる教会の役割を果たすものでもなんでもない。  
でも、心配してくれてるから、こんなにメールをくれるんだよね。
いや!でもただの暇つぶしってことだって...。
でも流石に返信はすべ『(ぱくり。)』


「花ちゃん、駄目。食べる時は、食べよう?」
「そーだぞ!」
『...は〜い。』


渡狸はともかく、カルタちゃんに言われちゃったら折れるしか。
あたしは大人しく携帯をしまい、お弁当を食べ始めた。



午後。

体育の授業もお陰様で怪我なく終わり、HRまでの休み時間。
やはりどうにも携帯が気になって、すっかり慣れた手付きでメールボックスを開く。
丁度今さっき受信したメールがあった。
ここまできたら、送り主も既に知れよう。


[本文:1日、お疲れ様でした。僕にとってはやはり花様のいらっしゃらない時間は大変長く感じられます。たとえ僕の携帯に花様のアドレスが登録されていても...。]

[本文:授業が終わったら、出来るだけ早く... いえ。正門で首を長くしてお待ちしていますので。]


『ふふっ。』


これには流石に笑いがこぼれてしまった。
いつもあんなに律儀な彼が、メールとなるとこんなに素直になるなんて。
あたしはまだ先生がいないことを確認して初めての返信内容を打つ。


[本文:わかってるよ]


ありきたりな文脈もどうかとは思ったけど、彼にはそれが丁度いいと思った。
あたしはそれを迷わず送信して、携帯を鞄の中にしまう。
なにせ、もう彼と連絡を取り合う必要はない。



あたしはHRを終えて、一番に教室を出て彼の元に向かった。



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