☆ 妖狐×僕SS

□三つ編み
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メゾン・ド・章樫、通称妖館に移住して数日が経った。
ここの暮らしにもだいぶ慣れた。
学校は通学時間の問題から一時的に転校したものの、クラスメイトにはここの住民のカルタちゃんと自称不良の渡狸とも同じクラスになれたので、特に学校での不満はない。


そして今日もあたしは眠い目をこすり、意を決してベッドから這い出た。
勢いよく傍の白いカーテンを開けて、パジャマを脱ぎ捨て着慣れた制服を纏う。
そして、薄暗い部屋の先にあるあのドアノブを開ければ…。


「おはようございます、花様。」


あたしの部屋の目の前で今日も律儀な彼があたしを待っている。


『おはようございます。』
「今日はいつもに増して、また可愛らしいですね。」


いや、別にいつもと変わらない制服なんだけどね。
…って違う違う!


『双熾くん。』
「はい。」
『三つ編みを…してくれないかな。』








 -話をさかのぼること、昨日の学校にて-


「花ちゃんって、いつも同じ髪型だよね。」


いつも行動を一緒にしているカルタちゃんが、カレーパンを口に含みながら休み時間そんなことを言った。


『あぁ…。確かに。ここに来てからずっと髪おろしてるなぁ。』


髪型に対しては別に拘泥していない。
とにかく寝ぐせがついていないなら、軽くとかすか、ドライヤーで少し熱を加える程度だ。


「花ちゃん。メガネをかけたらとても知的に見えると思うの。私、そんな花ちゃんを見て見たい。」


今にも周りのザワザワした空気にかき消されてしまうような小さな声のカルタちゃんは、カレーパンを食べ終わったと思うと、今度は右ポケットから早速ふちが少し太い紫色のメガネを取りだした。


『へ〜、そのメガネ可愛い!』
「うん、これ、伊達メガネだから。明日、かけて。」


するとあたし達の会話を聞きつけた渡狸がとぶようにやって来た。


「おー。いーんじゃねーの?あっ、それに三つ編みとかな!」
「三つ編み…可愛い…。」
「だろっ!?」
「じゃあ、三つ編みと、メガネ…。」
『え…。』


2人は勝手に三つ編みだの条件とメガネをあたしに押しつけ、それぞれの席へと戻って行った。


そこで、部屋に帰って来てから鏡越しに、さっそくカルタちゃんから借りたメガネをかけてみる。
フチが太めのせいか、めったにメガネをしないあたしだけど、特に違和感は感じられない。



『問題は、三つ編み…。』


実を言うと、あたしは生まれてこの方自分自信で三つ編みをしたことがない。
駄目元で試してみるが、まるでねじれパンのようになってしまい、とてもできる様子ではない。

















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