★ テニスの王子様

□キスで許して?
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『赤也、おっそ...』


時刻は午後5時過ぎ。
だいぶ暖かくなってきたとは言え、やはり陽が沈むと時折冷たい風が頬を撫でると肌寒さを感じる。
待ち合わせの時間にきて、もう1時間近く経とうとしている。


本日午後の眠気地獄な授業中にあたしの気を晴らしてくれた、彼からの一通のメール。



[先輩、今日一緒に帰りません?今日は部活珍しくオフなんですよ♪]



あたしはすぐに返事を送った。



[やった♪じゃあ授業終わり次第昇降口で待ってるから。]



メールを送って、30秒もしないうちに再びメールがくる。



[はい!遅刻厳禁っスよ?]




.......なんて。


あんな馬鹿赤也に期待してたあたしが馬鹿だったのかな。
帰り際に委員会の招集がかかり、てっきり赤也のお仕置きを喰らうことになろうと覚悟して予定の30分程後昇降口に向かったが、どこにも彼の姿は見えない。
テニスコートもちらりと見に行ってみたが、人がいる気配はない。
...。
まさか、忘れたなんて言わないよね?


あたしはハァッと大きなため息を無限に広がる空に吐いた。
そして、刹那、やっと...


「先輩!」
『...赤也?』


彼がやってきた。
彼は中身のプリントやらノートやらが見え隠れしたままのカバンを乱雑に持ってこちらに息をきらしてやってきた。


『...遅い。』
「ごめんなさい!ほんっとすみません!...怒ってます?」
『当たり前じゃん。』


あたしはムッとした顔で両手を膝につける赤也をにらむ。
...なんて、内心は凄くうれしいんだけどね?


「...先輩。すんません...。」
『.......もーいーよ。』
「...っ」


まるでその場が凍りついたかのように、冷たい空気があたし達の周りを囲む。
そろそろ、なーんてね♪なんて、吹っ切れるべき時であろうか...


ちゅっ!


『...!?』


そんなことを考えていた瞬間。
突然目の前が真っ暗になり、呼吸がとまるくらいに苦しくなった。
だんだん唇から赤也の温もりが伝わってくる。
あぁ、あたしは今赤也の腕の中にすっぽり入っていて...キスされているんだ...。


「...っ、はぁ...っ」
『赤也...』
「すんません、俺...担任に帰り際呼びだされて...逃げきれなくて、それで英語の追試を...。」
『それで、キスで許してもらえると思ったわけ?』
「...!!.......すんません」
『そんなことされたらさ...許しちゃうに決まってるでしょ...』
「えっ。」
『赤也、ズルい...!』
「えっ、ちょ、え!?」


あたしは赤也を上目づかいでにらんだ後、ぷいっと彼に背を向けて、ずんずんと正門を目指し歩いて行く。


そうだ、君はズルい。
そうやっていつもあたしの一枚上をいくんだから。
そう、どんなにあたしが、彼を丸めこもうとしたって。





 in 帰路


「ところでっ、先輩、さっきの上目づかいめちゃくちゃ可愛かったっスよ♪」
『!?』
「もっかい...やってくれません?」
『...//やるもんか!バカっ!』


(バシッ)





end.


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