★ テニスの王子様

□想い、重い。
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それは、部活帰り。
2人きりの帰り道でのこと。



「そんな脹れっ面して。先輩、今度は何が不満なんですか?」
『...っ、赤也ぁぁ〜っ』
「ううぉっ...///」


あたしは今にも溢れだしそうな涙をこらえて、ぽけっとに手を突っ込んで隣を歩く赤也を抱きしめた。
赤也のラケットバックが邪魔をして手が背中まで回らないが、彼の温もりがだんだんと伝わってくる。


『...赤也、苦しくない?』
「は、はぁ?」
『あたしに抱きしめられて...』


自分でもおかしい、これはおかしいとは思った。


あたしは昔から恋愛が下手だ。
伝えたい気持ちを素直に伝えられない。
相手に断られたり、自分のプライドが傷つくのが嫌だから。
でも、彼はそんなあたしでもいいと言ってくれた。
俺の前で、少しずつでいい。
少しずつでいいから、素直になってほしい。
あたしが一生分の勇気を奮うって彼に告白したら、彼はそう言ってにこやかに笑ってくれた。
だから、ちょっとずつ、赤也には自分の思うことを自ら口に出すようになった。


『大好き』

『一緒に帰ろう』


恥ずかしかったけど、ちょっとずつ。


でも、まだあたしには彼にひとつ言えていないことがある。


『他の女の子と話さないで』


さすがにこれはヘビーすぎると分かってる。
でも彼が部活の休憩中に女の子から差し入れをもらっていると、凄く胸が痛む。
赤也は他の女の子といる方が楽しいのかな。
とか。
色々考えてしまう。


だけど、この言の葉は赤也の行動を制御するだけにすぎない。
むしろ、赤也を精神的につぶしてしまうかもしれない。


 ―だから、これだけは言えない。


「先輩、どーしたんですか?」
『赤也...』
「?」
『好き。』
「俺の方が好きっスよっ、先輩!」
『...』
「...先輩、ほんとに言いたいこと、言っていいんですよ。俺達、隠し事はしないって約束したじゃないですか。」
『本当に...?赤也、嫌がるかも...』
「何でですか?俺、先輩のどんなところでも受け止めますよ。」


赤也はそっとあたしを抱きしめて、あたしの髪に顔をうめた。


...赤也。


『あのね...赤也が、他の...女の子といるのが嫌なの...。』
「...!先輩......」
『だから...』
「先輩...っ!!!!」


その瞬間、あたしの呼吸が止まった。


言いかえれば、赤也があたしの呼吸を止めた。
唇と唇が強く重なり、赤也の手に力が入る。


『んん...っ。っぁ...っ』
「..っ//」
『あか...や。』
「先輩、俺、ずっとその言葉が欲しかったんスよ?」
『え?』


赤也は少しあたしとの距離をとり、まっすぐにあたしを見つめる。


「最近、先輩も勉強で忙しそうだったからゆっくり話せてなかったから、ちょっと女の子と仲良くしてたら嫉妬くらいするかなって...へへっ」


赤也はぽりぽりと頬をかきながら、またあの時と同じ笑みを見せた。


『...っ、赤也の馬鹿っ!!!』
「うっ...あっ...せんぱ...苦しい...」


あたしは力をこめてラケットバックと一緒に彼を抱きしめた。


「先輩...だから、言って下さいよ。本当に思ってること。今、遠まわしに言いましたよね?」
『赤也...』
「?」
『他の女の子と...話さないでっ///あたしだけと...いて...///』
「くくっ、最初からそう言えばいいのに!
りょーかいっ!」


赤也は、彼にしがみつくあたしの頭をぽんぽんと撫でて、おでこに軽くキスをした。




赤也...?


あたしの『不器用な好き』




伝わった…?











end.

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