★ テニスの王子様3★

□Let's song!
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「...っちゅーなりゆきで。」
『そうだったのかぁ...。なんかやたらイライラしてたと思ったんだよねぇ。』


あたしは今、光を前に空き教室を使って机を挟みお弁当を食べている。
光はいつも通りコンビニで買ったと思われる善哉と鮭おにぎりをならべているが珍しくそれに手をつける様子もない。
だいたいそういう時は何かムカつくことがあったり、部活で上手くいかなかったり。


「女の勘ですか。恐ろしいっすわ。」
『恐ろしいって何やねん!3年も男だらけのテニス部マネージャーやってたら分かるよ、そのくらい。』


あたしは枝豆を口に含みながらそう言い、机の上に置かれた水筒に手を伸ばした。
すると、水筒をつかんだあたしの手の上からさらに彼の手がそれを包んだ。


『...!?』
「先輩、俺、いい考えがあるんです。」
『いい...考え?』


光はこくりと可愛い顔をしてうなずくと、空き教室に無防備に置かれたオルガンの電源を入れて、ぽーんと響く電子音の鍵盤を人差し指で押した。


「俺が音楽奏でるんで、先輩歌ってはって下さい。」
『はいぃぃぃぃ!!!!??』


あまりに唐突なことを振られて、頭の中が真っ白になる。
さっきの頷いた顔は確かに“年下の男の子”感バリバリでめちゃくちゃ可愛かった。
なのに!
今オルガンを前にして立っている彼はそれはもう不敵な笑みを浮かべて。
というよりも、あたしのリアクションをめいいっぱいに楽しんでいるといった様子だ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪



そうやってめちゃくちゃな思考回路をぐるぐると旋回しているうちに、耳に聞いたことのあるようなメロディーが入った。
それはアクティブなテンポで、光の左手で奏でる重低音と陽気な旋律がマッチして、綺麗な前奏を奏でている。
この曲は...
いつも光と一緒に音楽を聴くときに必ずと言っていい程よく流している音楽だった。
勿論歌詞を2人で口ずさんでいたりもした。
顔を上げて光を見ると、ほら、と言うようにあたしをじっと凝視している。
これは...


『Lalala.... lave me to...』


前奏が終わり、Aメロに入る。
というか、よりによってこの曲か...!
あたしは顔を赤らめながら、小さく口を開けて光の奏でる旋律に乗せて歌った。




今日も会えたね
大好きな君の笑顔に
照れくさくていつも言えないけど
大好きだよって
言ってみようか


さぁ高ぶる気持ちを言葉に
ってみんなそう言うけれど
だけど やっぱり 言えない
浅はかに言えるほど
この気持ちは
軽くなんてないんだ


Love to you!
Love me too!
ココロで唄って
いつも
感じてる
Lalala
嘘なんて
言えない!
the sweetest feeling is my true hart
I wanna you to recieve its...


Lalala...lalala...lalala......






「.....先輩可愛すぎで俺がどーにかなりそう。」
『変態か!』
「可愛かったですわ。」
『....放課後から気ぃ取り直して頑張れる?』
「当たり前やないですか...これで1日はもちます。」
『1日...』


あたしは顔を真っ赤にしながら光にツッコミを入れた。
あぁ、恥ずかしくてたまらない。
なにこれ。


『しかも、よりによってこの歌歌わせるとか。』
「ええやないですか。なんか無償にこれが聴きたくなったんですわ。」
『知るか!』
「でも俺別に先輩に歌えなんて一言も言ってないんですけどね。」
『っ!!!』


光め...
やってくれたな。


「ええやないですか。可愛かったんですし。」
『よくないわ!』


まぁ光が元気出たんなら、歌った価値はあるかなって思うけどやっぱり、カラオケとは流石に訳が違った。
あぁ、恥ずっ!
この記憶だけ光との思い出から抹消したい...。


そんな思いとは裏腹に、先ほどの“事件”が光の携帯にしっかり録音されていると知るのは、光のイヤホンが新しくなったあとのお話。






end.

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