★ テニスの王子様3★

□不器用
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あたしは今、息をきらして部室へと向かっている。
何故かって?
そりゃあ、大好きな光から呼び出しがあったから。
光に会えるなら、別に昼休みを潰したって構わない。
それだけ、彼を想ってる。
下駄箱で履き慣れたローファーに足を入れ、校舎を勢いよく飛び出すとすぐに部室が目に入る。
あたしはそこに駆けて、勢いよく部室の若干錆れたドアノブを捻った。


「遅すぎっすわ。」
『はぁっ...はぁっ...』


中に入ると、ポケットに手を突っ込んだ光がこちらを振り返ってそう言った。
いいか光。
普通の女子なら呼び出しされても走って来ないんだからな?


『...っさい!』
「まー...ええですけど。」
『何、もう...』


あたしは息を整えて部室の一角にあるロッカーの向かいのイスに腰を下ろした。
光はそんなあたしを見て、ズカズカとポケットに両手を突っ込んだまま歩み寄ってきた。
その顔は無表情で、切れ長の目があたしをじっと見下している。


『...何?』
「先輩。」


ぎゅうううっ...


光はあたしをイスから立たせるように、まるで息が止まってしまうのではないかと思ったくらい、唐突に力強く抱きしめた。
あたしは光に身体を持ち上げられるように抱きしめられて、自然と中腰のような微妙な体勢になる。
しかし...
これは本当に苦しい。
身長は勿論光の方が高いので、鼻、口は共に光の胸元にあり空気を確保することができない上に、強く抱きしめられて、それこそ息ができない。
しかも、それと同時に嬉しさと緊張で上がりゆく心拍数というダブルパンチ。これはひどい。


「...っ。先輩愛してます。」
『.../////』


...って、照れてる場合じゃないだろ!
ほんっと苦しい!


あたしは力を振り絞ってどんどんと彼の胸にげんこつを打ちつけた。
するとやっと堪忍したのか、光はそっと手の力を弱めた。
あたしはそのスキをついて、勢いよく彼の腕の中から離脱する。
...名残惜しくはあるけれど。


『っ、はぁっ、苦し....っ。』
「俺からの愛情表現ですわ。」
『もーちょいマシな表現の仕方ないの...!?』
「思いつきませんわ。」
『このガキ...』
「まぁ先輩も先輩でそのガキより1歳年が上ってだけなんですけどね。....プッ。」
『こ、こら!そこ吹くな!1歳デカいんだからな!ほんとっ!』


まぁ、そんな不器用な君がやっぱり大好きなんだけどね。






end.


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