★ テニスの王子様3★

□犯則
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「流石に最近やりにくいっすわ」



隣でぼそりと、光があたしの手を繋ぎながら呟いた。
時間は完全に日が沈みきった夜6時半。 
部活が終わり全員が帰ったのを確認してから、こうして2人で帰るのが日課だ。
何故、部活であたし達の交際を公にしないのか。
最近部活内でつくられた男女交際禁止というぶっ飛んだルールのためだ。
無論他の部員は律儀にそのルールを守っているらしく、バレた時怒濤の怒りを喰らうのはあたし達だけになるだろう。
(お察しのように小春ちゃんたちはその対象にはならない。)
仕方ない。
付き合い始めたのはそのルールができる前からだったのだから。


そりゃあ、やりにくいことこの上ない。
勿論部活中は下手に話なんて、と無駄に意識してしまうし、弁当も裏庭やら屋上にはテニス部部員が陣取っているため下手に2人で食べるわけにもいかない。


...というか、今思えば部活中マネージャー含め女子はあたしだけ...?


『つまりあたしはテニス部の誰とも付き合っちゃだめってこと?ってことはこのルールってあたしだけに適応されるってこと?』
「今更ですか。」


呆れたような声があたしをぐさりと刺した。
そりゃあ...
その当時意識したことと言えば、あたし達の交際をどうやって隠し通そうかと、そんなことばかりなのだから。


「どうせ謙也さんと部長らの仕業でしょ。あの人たち下心見え見えやん。」
『...?そうだったっけ?』
「先輩なんも感じなかったんスか。先輩が誰にも、せめて、俺ら部活仲間の奴等にはとられんよーにっちゅー話やろ。」
『....へぇ。』


そんな男子中学生らしいことを考える白石と謙也を思い浮かべると、恥ずかしさからか口元が緩む。


「なにニヤニヤしてんですか。キモいっすわわー。」
『...っ、うっさい!』
「俺以外の男に好かれてニヤニヤする程嬉しがる人やったんですね。先輩は。」
『だから違うって!』


あたしは空いた右手で光の頭を叩く。 
こんなことが、やりたい時にできないから辛い。
もはや、こうやってお互い気を抜いて話せるのはこの下校の時だけだ。


「このルール、ほんま気に入らないっすわ。」
『?』
「部長らの前で先輩が彼女だって見せつけられないじゃないですか。」
『そーゆーことかい。』
「そうしたら部長らも諦めるやろ。なんせ彼氏が俺ですから。」
『...あー、はいはい。』


自惚れ財前に適当に返事をしてあたしは空を見上げた。
でもね、光知ってる?
確かに学校で下手にベタベタすることはできないけど。
でも、だからこそ、2人で一緒にいられるこの時間が愛おしくて。
その何倍も君が愛おしいんだよ。


だから...


ちゅっ


「......っ」


普段あたしからキスなんてしたことないけれど。
今日はこのルールを皮肉る君に、背伸びをして綺麗な唇に自身の気持ちと一緒に唇を重ねた。
あたしのこのルールに対する本当の思いと、君を想う気持ちが伝わるように。
分かってくれた...?
あたしはこのルールのおかげでもっと君が愛しく、一緒にいられる時間が大好きになったんだよ。


「せんぱ...っんんっ...」


瞬間、頭半分くらい大きな彼があたしを強く抱きしめ、呼吸もままならない程に強いキスをした。
頭が真っ白になって、大きく見開かれるあたしの目。

   ・・ 
「先輩犯則っスわ。」


あたしを抱きしめながらぼそりと呟く彼。
光もこれで、この時間が大好きになれたんじゃないかなって。
ねぇ、君はどう?
こんな時間、好き?





end.


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