★ テニスの王子様3★

□はんばーぐ
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《先輩キモいっスわ。》


なんて、嘘ばっかり。







『ひーかるっ。今日一緒に帰らない?』
「..ヤダって言ったらどーします?」


そうやってあたしを騙して。


『そしたら光の後ろ着いて歩く。』
「ただの変態じゃないっスか。」
『だって仕方ないじゃん。』
「...えーですわ。先輩が警察に連れて行かれるのも、それはそれで嫌ですし。」
『光...』


あたしは目を伏せてフーッと息を吐き、頭をぽりぽりとかく光を見つめる。
が、まるで哀れなものを見るように目を開けて光の放った言葉は...


「俺まで一緒に警察行きなんて、とんでもないっスわ。」
『そうそう、面倒だしね!......って、そーゆーことかい!』


結局いざこざの末、やっぱり一緒に帰るのがいつものオチ。
やっぱりこの時間が一番好きだ。


下校ラッシュの時間帯を避けるべく、教室や廊下でお互いに干渉することなく携帯や音楽プレーヤーをいじり、時間を浪費する。
生徒たちの甲高い声が聞こえなくなった時に、2人で昇降口を出る。
あとはそれぞれの別れ道までたわいもない話をしながら、はたまたイヤホンを分け合い、お互いお気に入りの音楽を聴きながら歩く。


今日も、いつもと変わらず、そうやって夕日が眩しいくらいに町並みを照らす帰り道だった。


「...先輩、今日ちょっと俺ん家寄って行きません?」
『...は?』


光のお気に入りの曲をBGMに、そんな声がぼそりと2人だけの道路に響く。


「今日、誰もいないんスよ。」
『...そうなんだ。』


そんな甘い誘惑に喜びつつ、どこか警戒している自分がいる。
こんなの、滅多にないチャンスなのに。


「......じゃー、ご飯だけでも。」
『え?』
「折角だし、つくって下さいよ。俺に。先輩の夕飯。」
『...っ』
「ま、嫌とか言わせるつもりないですけど。」
『ちょ...わっ!』


いつも別れる交差点に着いた途端、光は強引にあたしの手をひっぱって家とは逆方向の道へとずんずん進んで行く。
彼としては...
きっとこれでも気を使った方なのだと思う。
あたしが下を俯いて、少しノリ気じゃなかったのを、光は絶対見抜いてた。
だから、≪夕飯だけ≫なんて、そんなこと言って...。


『.....ふふっ』
「っ、何笑ってんスか!いつも以上にキモいっスよ、先輩。」
『うるさいな!そういう光だって、光らしくないよね。』


さりげなく気遣ってるところとかさ。


「は?先輩さっきから言ってる意味が全く分からないんですけど。」
『じゃあいいよ、分からなくて。...で、何が食べたいの?』
「...ハンバーグ。」
『ほ、ほお。いきなりハードル高いね...!まぁいいや!よしっ、こーなったらスーパーで買い出しだよ!』
「あー、そういやぁ家に何もなかった気が...。」
『えっ、嘘っ、お金足りるかな...。』
「足りなかったら俺が貸しますわ。」
『お前が貸すんかい。』


そうして、あたし達はスーパーに向かい、2時間近くかかって夕食の支度をしたのでした。




(「...先輩手つき悪すぎっスわ。」)
(『ちょっ...うるさい!話しかけない...でっ!』)
(「...はぁ。」)



end.


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