★ テニスの王子様2★

□はじめて
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『んー...』


あたしは喉を唸らせて頬杖をつきながら窓の外を見上げた。
空はすっきりとしないどんよりとした雲に覆われていて、薄暗い。


跡部と付き合い始めて、もう1ヶ月が経とうとしている。 
というのに。
なんとか手をつなぐところまでいったものの、何故かキスまで行き着かない。
跡部なら、俺様気質ですぐにしてくれるだろうなんて考えていたが
、全くそんなことはなかった。
むしろ付き合い始めてから跡部の象徴俺様気質が薄れてきているような気もしている。
これは...

 
『あたし、何かした?』
「あ?」


昼休み、周りから気づかれないように跡部をメールをして呼ぴ出し、ついに聞いてしまった。
こんなこと、言うもんじゃないって分かってるけど、やっぱり気になる。


「急に...っだけど...その...なんか、最近跡部が跡部らしくないって言うか...そのー......」


いざ本人を目の前にして思いを伝えようとしても、緊張からか、言葉が出てこない。
跡部は眉間にしわを寄せて、じっとあたしを見つめたりなんてするから、それはもう余計に。


「逆に俺様が聞きたいくらいだ。」
『へ?』


唐突な跡部の台詞に間抜けな声が漏れる。


「...付き合い始めてから、お前たどたどしいんじゃねーの?」
『...っ、それはっ!跡部だって!』
「アーン?」


さらに眉間に寄せられるしわに少し動揺しながらも、言葉を続ける。


『あっ、跡部だって!付き合ってもなかなか手握ってくれなかったし!...っ、あとはっ、抱きしめてくれたりとかっ、き、キスとか!跡部のくせに、してくれないじゃん!』


...?
いかん、頭に血が上って、つい思ってたこと全部吐き出した...ような気がしてる。
だって、なんだか...
もの凄く気持ちがスッキリしてるんだもん。
ふと、我に返り、自分の吐いた言葉に赤裸々。なんて、後の祭り。
気恥ずかしくなって、顔を両手で覆う。
馬鹿か、あたしは!
何言ってるん...


『.........ッッふぅっ....///!?』


突然、跡部の綺麗な蒼色の瞳があたしの瞳を覗くように近くなったと同時に、唇に温かい何かが触れた。
状況も何も理解できずに、あたふたとするあたしをまるで押さえるかのように、すぐさま跡部の腕があたしの背中に回った。


初めてのキス。
初めてこんなにも、君を誰より近くに感じてる。


普通、カップルなら誰もがまるで当たり前にやることのようかもしれない。
けれど、嬉しくてたまらない。


少しして跡部との距離がゆっくりおかれる。
まだ、どきどき高鳴る鼓動に、苦しかったはずの呼吸すらも忘れてしまう。


「嫌かと思ってただけだ。」
『...え。』
「初めてだから、全部手探りしかねぇだろ。...初めてだったんだよ。女と付き合うなんて。」
『!!?嘘でしょ!?』
「アーン?俺様がそんなたらしに見えるってのか?」
『みっ、見える!』
「...っ(てんめぇ...後で覚悟しておけよ)」


こうして...
なんとか跡部とのファーストキスをおさめた素敵だったはずの一日は、後程部活にて仕事を大量に任され微妙なかたちで終わったのでした。
はじめてって、謎が多くて、ホントに手探りだけど...
2人でなら、真っ暗な場所でも一緒に乗り越えられるよね。
ね、景吾...




end.


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