東方儚奏仙

□第三章 仙人にとって……〜The sorrowful memorys〜
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「ただいま帰りました、大狼様〜」

 憂香は山の中のとある洞窟の中でそう叫んだ。

 すると、しばらくして、大きな狼が姿を現した。

 この狼こそ、前述した人語を理解できる、山の主の大狼だ。

 狼はくぅ〜んと憂香に顔を擦りつけると、「おかえり、憂香」と一言。

 狼がそういうと同時に、洞窟の奥からもう一匹の大きな狼と、小さな狼が現れる。

 今の憂香は、この狼一家が家族。山の主が一緒の家族とは、些か妙に感じてしまう。

 ただ、残りの二匹は人語を理解できない。主の方は永く生き過ぎたため、人語を理解できるのであって、残りの、生きている年数が主より短い二匹は理解できる筈がなかった。

 どちらかと言えば、主は妖怪に近い。

「今日はどうだったかい? 何か楽しい事でもあった?」

 憂香は首を振る。

「そうかい」

 主は笑ったように見えた。それにつられ、憂香は微笑む。

「ウォウ! ウォウウォウォウ、ウォウ!!」

 小さい方の狼が吠えた。肉はまだか、と言っているように見えた。それを、もう一匹の大狼が前味でつついて制す。どうやら、母狼と子狼のようだ。

「ふふ、そんなに吠えなくても、餌ならあるわよぅ」

 ヒョイ、と憂香は何かの肉を取り出した。猪の肉だ。

 子狼は憂香の手からそれを引ったくると、前足を上手く使って食べ始める。本当にに子供みたいで無邪気だ。もの場の全員が微笑んだのは言うまでもない。


 憂香は洞窟から出ると、うーんと伸びをして、修行へと向かった。
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