東方儚奏仙
□第三章 仙人にとって……〜The sorrowful memorys〜
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「自警団?」
雄一が村長に聞き返した。
「ああ、そうだ。外からやってくる人外から、この村を守る自警団になってほしいのだよ」
雄一はどうしてこの里はこんなにも人外を嫌うのか、不思議に思っていた。
この里に来た時もそうだった。門番は鋭い目つきで自分の事を睨み、いざ人間と分かったのなら真っ先にこの人の前に通した。
そこまで人外を嫌う必要なんてないのに。雄一は内心ため息をついた。
……だが、里の掟には従わなければならないのだ。
皮肉にも、彼は生命の鼓動をいとも簡単に奪う事ができるほど卑劣ではない。むしろ逆。殺す事は罪だと思っている。……そのためか、彼は肉を食べない。食べれない。
「それにだよ、自警団になれば君一人の家を提供しよう。何時までも他人の家に居候というのは、些か気が引けないかい?」
雄一は確かに、と頷いた。彼は確かに他人の家に居候している。だが、その家の家族も、いつかは自分がお荷物に見えてくるということも考えられる。
雄一は迷った。どちらを選ぶべきか、と。
……ふと、彼の頭にある事が閃いた。
「村長さん、あの……」
夜。憂香が子狼とじゃれている間、主は里の近くを散策していた。
鳥達から聞いたのだが、どうやら里に新しく人間が移り住んだ、というのだ。
目が暗闇の中、緑色に光っている。それはいかにも自身が獣だという事を主張しているかのようだった。
……ふと、人の気配がした。無音で主は振り向く。
一人の青年が此方をみていた。いや、見ていたのなら良いのだが。
青年の周りには、ふよふよと浮かぶ物体がとんでいた。3、4匹ほどだろうか。それがほんのりと光を発していたので、主は一種の不気味さを覚える。
……こちらを見ているのに、何故攻撃してこない? 里の人間じゃないのか?
青年は主のその考えをよそに、無音で暗闇に消えた。