東方儚奏仙
□第三章 仙人にとって……〜The sorrowful memorys〜
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憂香はうーんと伸びをした。
今日の修行はこれくらいにしとこう、そう言って座っていた岩の上から飛び降りた。ちなみに地面との高低差は200センチほど。少し高いかもしれないが、それは人間にだけ言えることだ。
さて、帰ろう。そう思い、憂香は洞窟へと向かった。
ふもとの里。
ここは前にも述べたが、人外を拒絶している。
だが、その分、山に迷い込んだ人間は丁重に扱う。
「……」
「……」
砦の門にいる二人の門番は、何かを睨むようなぐらいの鋭い目つきで、門を張っていた。体つきも、平均的な男性よりがっちりとしていて、これぞ門番という威厳を放っている。
「……あれはなんだ?」
その門番の一人が、人影を捉えた。
「妖怪か?」
だが、その姿は妖怪とは程遠い。
マントのような布をはおり、背中には荷物らしきものが詰め込まれている。
「……人間かもしれない。確かめてみよう」
その男が門番の前で歩みを止めた。
「貴様、何者だ?」
右にいた門番が槍を構えて問うた。
「ああ、門番さんですか?」
そういうと、両手を挙げて、自分は敵ではないというしぐさをした。
「人間か?」
と、今度は左の門番が。
その問いを聞いた男は、もちろんと頷いた。
その男、名を三国雄一という。
この里に行くように、別の里から言われた、もとい、彼のとある能力によって追い出された、人間だった。
後に、憂香と恋に落ちる男だ。