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□平和だった話
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「いやあ、キミたちは本当にすばらしい!埋められた土の中からでも出られたような気分だよ」
「……」
「……」

つい三時間ほど前にたどり着いたこの国で、安くてきれいな宿屋を見つけ、まさに足を踏み入れようとした時だった。
恰幅の良い中年の男が一人、歓喜の声をあげながら近寄ってきた。

「キミたちは私たちの救世主だ。よくこの国に立ち寄ってくれた!」
「…そうですか。ボクはこれで」

目の前の救世主となろう人間が興味も示さず踵を返したのを見て、男は慌てて、

「ちょ、ちょっと待ってくれよ旅人さん。ぜひお礼をさせてくれ」
「お礼?」
「おっ、相変わらず目ぼしい」
「……めざとい?」
「そうそれ」

一人と一台の会話を聞いて安心したのか、男は満面の笑みで自己紹介を始め、そして尋ねた。

「私はこの国の犯罪防止局局長マーズという。よかったら名前を教えてくれないか」
「キノです」
「こっちはエルメス。以後よろしく」
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